ブーンミコ酢 ブーン系過去作まとめ

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(-_-)は世界を救うようです 3

43 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/05(日) 15:58:52



【 三 】



ヒッキーは生きているだろうか。

無駄にそんな不安に駆られた。

おかしな奴だ。

僕も彼も。

そう思いながらヒッキーの家のチャイムを押す。

…………そうだった……鳴らないんだった……



「何してるの?」

Σ('(゚∀゚∩「!」

(-_-)

相変わらずの無表情が、左から現れた。しかも昨日のマントも着ている。

確かに、今朝は涼しい、夏の朝だ。

('(゚∀゚;∩「……いや……もちろん迎えに来たんだけど……」

(-_-)「……まあ、そうだね……」

('(゚∀゚∩「あー、と……じゃあさ、早く伊藤さんに会いに行こうよ!」

昨日のテンションは、いくら頑張っても再現できなさそうだ。
.


44 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/05(日) 15:59:33

(-_-)「……そうだね…………ところでさ……お腹空かないかい?」

('(゚∀゚∩「……僕は空かないけど……そうだね、昨日何も食べてなかったんだね……」

彼は人間だ。

昨日何も食わなかったのに文句一つ言わなかった。

(-_-)「お察しの通り、僕には飯を食うための金も無いよ……」

ヒッキーの目は僕の方に向いた。

自嘲? 催促?

その目が表しているのは、どちらでもないような気がした。

('(゚∀゚∩「……じゃあどこに食べに行く?」

(-_-)「……コンビニ弁当でおk」

('(゚∀゚∩「別に贅沢言ってもいいんだよ? 金なら無限にあるし」

(-_-)「ならなおさら……貨幣価値を落とさないようにしなくちゃ……ね?」



「その通りだ」と、僕はヒッキーの提案を承諾した。

僕らはそのままコンビニに向かい、弁当を購入した。
.


45 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/05(日) 16:00:27

('(゚∀゚∩「あ、言い忘れてた」

(-_-)「何を?」

('(゚∀゚∩「やっほー」

ヒッキーは明らかに不快そうな顔をした。



無言で、貪った。

コンビニの前に居座って。

会話は無かった。

ヒッキーの貪り速度は、「腹減りには慣れているんだ」と雄弁を振るっていた。

その遅さも相まってか( ^ω^)←こんな顔のコンビニ店員は迷惑この上ないと言いたげな顔をしていた。

黒いマントを着た男二人が、店の前で居座って弁当を無言でゆっくり貪っている。

確かに、迷惑この上ないだろうな。

('(゚∀゚∩「ヒッキー、他所に行こう」

(-_-)「……そうだね……でもゴミ箱のあるところじゃないとね……」

ヒッキーは不満があるかのような仕種で立ち上がった。

('(゚∀゚∩「ゴミ箱ねえ…………」

僕は変な想像をしてしまった。

ヒッキーはポイ捨ての一つもしたことが無いのか?

僕はその疑問を、その通りに投げかけた。
.


46 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/05(日) 16:01:00

「いいや。あるよ」

「…………そりゃそうだよね」

「……もちろんポイ捨てなんて常習的にやってたわけじゃない……

 ……子供の頃に、数回やっただけだよ…………でもさ……」

「でも?」

「……あのときのポイ捨ての天罰で、僕の人生は酷いことになったのかな……なんてさ……」

「………………だといいね……」

「……ああ……ほんと、そうだよ……でも、絶対にそうじゃない…………だから……ね……」

許せない。と。

そうだね、ヒッキー。



僕は切に願った。

ヒッキーがこんな目にあっているのは、ポイ捨ての所為でありますように。

誰か、他人の所為ではありませんように。

そして、この世からポイ捨てが無くなりますように。

叶わない願いを、切に。
.


47 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/05(日) 16:01:34



('(゚∀゚∩「…………さあ……行こうか……伊藤さんに会いに」

(-_-)「……うん」

僕らは駅に向かった。

弁当の殻はゴミ箱に捨てた。

駅の構内、

タバコの吸殻をちりとりに集めていた清掃員がいた。

「ポイ捨てしても、ゴミ箱に捨てても、誰かが片付けてくれるんだよね」

僕は呟いた。

「誰にも迷惑がかからなければ、ゴミは放置されるんだよね……」

そう言ったヒッキーは線路の中を見ていた。

一方が焦げた白い棒状のものがたくさん存在している。

「……そういえば、ゴミの埋め立て処理場って、そういう寸法なんだよね……今初めて気がついたよ……」

「……気にしなければ誰も気づかないよ、そんなこと」



数分後、電車はゴミを隠すように僕らの前に止まった。
.


48 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/05(日) 16:02:12



電車の中、

僕はやはりヒッキーにもう一回訊いておくべきだと思った。

('(゚∀゚∩「ヒッキー、本当に伊藤さんに会いに行くんだね?」

(-_-)「もちろんだよ……」

自信無さそうに見えたのは、気のせいであってほしい。

('(゚∀゚∩「……本当に愛の告白、するんだね?」

(-_-)「…………そうだね……そりゃするつもりだよ……」



(-_-)「……」

ヒッキーの顔が、いつになく暗かった。

いつも暗いけど。

('(゚∀゚∩「……どうしたんだい?」

(-_-)「……伊藤の笑顔ってね……最高に素晴らしいんだよ…………」

ヒッキーの顔は、笑ってはいなかった。

('(゚∀゚∩「…………」

「ひょっとしてそれは惚気で言ってるのか?」

そんなこと言える雰囲気じゃなかった。
.


49 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/05(日) 16:03:21



電車は時間通りに駅に着いた。

伊藤の通っている大学の最寄駅。

ヒッキーの顔は、やはり変わっていなかった。

('(゚∀゚∩「…………ホントに大丈夫かい?」

(-_-)「…………これはもうだめかもわからんね……」

('(゚∀゚;∩「ちょ……いきなり何言ってんだよ!」

「大丈夫」

そう答えてくれると思っていた。愚問だと思っていた。

ヒッキーは笑っていた。

気がおかしくなってしまったのだろうか。



足は勝手に進む。伊藤のいる大学へ。

淡々と、淡々と。

覇気なんて物は一切無しで

どこまでも作業的だった。
.


50 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/05(日) 16:04:01



('(゚∀゚∩「……じゃ……行ってらっしゃい……」

(-_-)「……うん……」

大学に入っていくその姿は

不審者そのものだった。

理由は、

マントを着ているから。

などではない。



数分経った。

ヒッキーはどうしているだろうか。

門のところにいる守衛に伊藤の居場所を聞いているのは見た。

学校の中を迷いはしていないだろうか。

人のことを待つのは異常に疲れる。
.


51 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/05(日) 16:04:52

いつからこんなにんげn……奴になったんだろうか。

もともとか。

モナーはしっかり仕事をしているのだろうか。

…………って300年も先輩にそれは失礼か……

というより、僕だな。一番仕事をしていないのは……



そして数分後

ヒッキーは戻ってきた。



(-_-)「…………ただいま……」

('(゚∀゚∩「おかえり!……で……どうだった?」

「不躾だよね」

「ごめんごめん」

ヒッキーの、適当に返した、僕に対する

その優しすぎる表情は

まったくもって、二度と見たくない。
.


52 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/05(日) 16:05:34

「…………楽しかったよ……」

ヒッキーの顔が快晴になる。

「…………告白……は?」

ヒッキーの顔には一点の曇りも無かった。

「……してないよ」



さあ。



何喋ろうか?



ねえ、会話はどうしたの?



「……どういうことなんだい?」

僕は怒りのようなものも覚えていたのだろうか。

ヒッキーは少し唸って、俯き、また顔を上げ、

「……伊藤の顔ね…………とっても素敵だったよ……」

その言葉は、最高にすがすがしくて。
.


53 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/05(日) 16:06:15

「……中学時代と変わらない……笑顔だった……」

僕は目を逸らしたくなった。

「でもさ、……ここで僕が告白したらどうなる?……

 あの笑顔は消えちゃうでしょ……?」

「……もし、……君のこと……伊藤さんが好きだったら?」

愚問。

「……んなはずないでしょ……彼女は断るはずだ……」

「何でそんなこと!──

「分かるよ……」

僕は認めたくなかったのかもしれない。

僕はどこまでも恥ずかしい奴だ。まったく。

「何年も会っていない……会おうともしていない……それに、彼女は僕に優しくしてくれたけど、

 その優しさは誰にでも等しく与えられるものだった……」

分かっていたのに。

たぶん僕は分かっていた。
.


54 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/05(日) 16:06:47

「……それでいい。……彼女はそうあるべきだった。そうでなければ僕も彼女のことを

 好きになりはしなかったさ……」

ヒッキーを唆して。

「うまく行けばいいな」なんて思って。

「……それでもさ……想いを伝えることは重要じゃないの?……」

悪あがき。

「……どっちにしろ伊藤の顔からあの美しい笑顔は消えて無くなる……」

怒っていたのだろうか。言葉の質量感が常軌を逸していた。

「理由はこうだ。まず場合分けして考えよう……

 付き合うことになる場合。僕が不幸を呼ぶ。伊藤をボロボロにする。

 僕はどうも世界に嫌われているようだし……?」

聞いていられないぐらい饒舌で、見ていられないぐらい作り笑い。

「君の言うとおり、思いを伝えることが最重要だとしよう。

 つまり、伝えて振られる場合。断るために彼女は考えなければならない。

 そこでまた笑顔が消える……

 あの優しい彼女が、考え無しに僕をバッサリと捨てるはずがない。

 ……別に驕り高ぶったり、買い被ったりしているわけじゃないよ…………」

そう言って自嘲的な笑みを。
.


55 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/05(日) 16:08:14



僕たちの間に、大きく厚い、空気の壁ができたようだった。

「僕には彼女の笑顔だけでいい……あとなんにもいらない……

 逆に『付き合って』って言われても……迷わず振ったね……」



「…………ヒッキー……」

僕は狼狽した。

彼は天を仰ぎ、言った。

細い、切れそうな声で。

「…………何で……なんで……泣いてるの……かって……?」

僕の口は力不足に封じられ。

「……さあ……な……何で……だ……何でだろうね……?」

孤独な世界に、一人

二人

やっぱり一人

「……後悔……なんて……していないさ……

 だから……かな……?……泣いているのは……」
.


56 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/05(日) 16:08:49



どんなに力不足な奴でも言えるのは。

「……ヒッキー……君……酒飲んだことある?」

「……酒…………無いね……」

「……飲みに行かないかい?」

このぐらいで。

「………………いいや……断るよ……」

彼の、赤い、涼しい目に別の感情を宿せたとしても、

僕の心は、曇って。



数分後、ヒッキーは「……もう大丈夫だ……落ち着いたから……」

と。笑ってみせた。

僕は咄嗟に歩く。駅の方角へ。

('(゚∀゚∩「……付いてきてよ」

立ち止まって後ろに告げる。

(-_-)「……どこに行くんだよ……」

その、「もう疲れた。寝させろ。」

とでも言うような感じの顔に。
.


57 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/05(日) 16:09:58

('(゚∀゚∩「まあ、いいからいいから」

(-_-)「…………酒は飲まないって決めてるんだ……」

硬派な奴だ。癪に障るぜ。

なんてことはない。僕も実は酒なんか好きじゃない。

('(゚∀゚∩「大丈夫だよ。酒を飲ませるつもりは無いからさ」

僕は20%ぐらい強引にヒッキーを電車に連れ込んだ。



また電車に乗ること数時間

ヒッキーの家からは随分離れ、

既に陽も落ち

(-_-)「…………どうやって帰るんだよ……」

('(゚∀゚∩「なあに、そんなに長居するわけじゃないよ」

ヒッキーは来たこともない街の灯の明るさに辟易していた。



('(゚∀゚∩「さあ、ここだよ!」

店の前に出ている看板には『バーボンハウス』

(-_-)「……バーボンハウス…………いかにも酒しか出てこなさそうだけど?」

苦笑い、店の中に入ることになった。
.


58 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/05(日) 16:10:32

(´・ω・`)「やあ、ようこそバーボンハウスへ。このみりんはサービスだからまず落ち着いて──

('(゚∀゚;∩「……サービスにみりん飲ませるの?」

(-_-)「……ちょうどいいんじゃない? むしろ度数も本みりんなら高いぐらいでしょ……」

何もかも受け入れるような横目で、辺りを眺めていた。

(´・ω・`)「……あれ、君は……なおるよ君かい? 久しぶりだね」

('(゚∀゚∩「お久しぶりです。それより店に入ってきた人に盲目的にサービスする癖、なおしたほうがいいですよ」

(´・ω・`)「うーん……確かおいしいものたべてといれにいってねればなおるんだっけ?」

('(゚∀゚;∩「…………そう考えている時期が僕にもありました……」

(-_-)「……………………」

背中に違和感。

('(゚∀゚;∩「?……ああ、ごめんごめん!……マスター、僕の友人です」

(´・ω・`)「そうかい?……お名前は?」

(-_-)「……ヒッキーです」

ヒッキーは小さく言って頭を垂れた。

(´・ω・`)「ヒッキー君……ね……把握した……」



「──じゃあ、注文を聞こうか」

マスターはとても上機嫌そうだった。
.


59 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/05(日) 16:11:34

('(゚∀゚∩「……酒は飲めませんよ、彼も」

(-_-)「……ええ、……まったくその通りです」

(`・ω・´)

(´・ω・`)ショボボーン



木の茶色の壁、淡い黄橙の間接照明に映えている。

BGMはアイスピックと静かな談笑の音色。

店内には見渡したところ奥のほうに二人の男女、もう少し手前に二人組の紳士がいた。

('(゚∀゚∩「……ショボンさん……儲かってる?」

(´・ω・`)「……それは聞いちゃいけないよね、ごめんなさいしないといけないよね」

面倒なのでごめんなさいするつもりは無い。

(-_-)「……ちょっと質問なんだけど」

('(゚∀゚∩「ん?」

(-_-)「マスターさんとはいつ知り合ったの?」

('(゚∀゚∩「…………そんなこと興味ある?」

この店で一番なさそうな人間だろう。

「……ある」

さらっと言われて、何か気が抜けた気がした。
.


60 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/05(日) 16:12:42

('(゚∀゚∩「……そうだね……8ヶ月ぐらい前じゃなかったかな……」

「冬の寒いときだったなあ……」

溜息が混ざって出た。

(-_-)「……どうして酒も飲まないのにこんなところへ?」

(´・ω・`)「それは僕も聞きたかったよね。教えてくれないと言うんならごめんなさいしないといけないよね」

('(゚∀゚∩「ごめんなさい」

(´・ω・`)

(´;ω;`)ブワッ



('(゚∀゚∩「僕はその日仕事をしていてね。偶然妙な噂を聞きつけたんだ」

(-_-)「……店内に入った瞬間サービスを出す店……ってこと?」

('(゚∀゚∩「“くわいと そー。”(その通りです)だよ! それで事の真偽を確かめるためにバーに来たんだよ!」

そこまで言うと、ショボンさんは激昂しはじめた。

(´・ω・`)「それで、彼が店に入ってきたとき、『サービスありますか?』って聞いたんだぞ

      ほいほいサービス出したら『あ、サービスは要りません』だってぶち殺すぞって言っちゃったじゃないか」



「日本語でおk」

僕らが発したその言葉は、マスターの涙腺を直撃したようだった。
.


61 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/05(日) 16:13:40

「涙脆いっていいことだよ。ほんとに」

ヒッキーがあまりにいけしゃあしゃあと、言うもんだから

「たぶんそういう問題じゃないよね、ごめんなさいしないといけないよね」

僕は少しだけマスターの味方になった。

「ごめんなさい……w」

僕らの下げる頭は、かなりお手頃価格だ。



また店には静かさが戻った。

さっきまでいた客も全部はけていた。

(´・ω・`)「……さ、もうそろそろなんか飲まないかい?……酒以外も置いてあるんだよ?……

       って、なおるよ君は知っているよね……グレープジュース飲んでったし」

('(゚∀゚∩「そうでしたそうでした……じゃあ今日はブルーベリージュースを……」

(-_-)「…………じゃあ僕はアセロラで」

(´・ω・`)「残念。それは在庫切れだ」



('(゚∀゚∩「嘘でしょ?」

(´・ω・`)「うん。嘘。今から出すから待っててねー♪」

……なるほど……『にくそい』とはこの感情のことか……
.


62 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/05(日) 16:14:31

マスターは超ご機嫌でジュースの戸棚を開けた。

光速でコップも出し、僕らの前に置き、ジュースはいつの間にかその中に満ちていた。

('(゚∀゚∩「仕事速いですね。じゃあいただきま──

(`・ω・´)「ちょっと待った!」

一呼吸置いて、また空気が流れ出した。

(`・ω・´)「君たちにはショットガンで飲んでもらおう!」

('(゚∀゚;∩「……ショットガンって……炭酸入れて、机に叩きつける奴ですか?」

(-_-)「……痛そうだね」

どこかバーの空気は、ずれていた。

(`・ω・´)「おうともよ! ちゃんと炭酸も置いてあるぞ! 今から出すからな!」

そういって、また棚を開けた。



あ、あ、

ゴキブリだあ。

(´・ω・`)

(´・ω・`)「ぶち殺すぞ」
.


63 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/05(日) 16:15:03

(-_-;)「待って!!」

マスターの顔は

(´・ω・`)

「はあ?」と言っていた。

('(゚∀゚;∩「ちょ……一体どうしたっての……」

ヒッキーは、今までで一番焦っていた。それを見た僕もだが。

(-_-;)「……多分もうすぐこの店から出ていくよ……玄関開けてください。マスター……」

(´・ω・`)「…………うん……まあ……いいけど……」

マスターは玄関を開け放した。

少し涼しい風が入ってきて、

浮遊。

闇の塊は、風に逆らい、外へ流れた。

そのとき、ショボンさんはその影にぶつかりそうになって

情けない声を出したことには敢えて触れないことにしておく。
.


64 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/05(日) 16:15:43



('(゚∀゚∩「……どうして分かったんだい?」

何か超能力でもあるのだろうか、と思ったが

(-_-)「……いや……なんとなく……」

ただ、中空を見つめ

(-_-)「…………なんとなくだよ……」

少し微笑んで、一気にドリンクを飲み干した。



マスターは何か呟いていた。

(´・ω・`)「…………ショットガン……」

('(゚∀゚;∩「そんなことに固執していたんですか……」

(-_-)「……じゃあ、おかわりください」

マスターの顔はその言葉を聞いた途端、ぱっと明るくなって、またしぼんだ。

「…………もうどうでもいいや……今日はサービスするから好きなだけ飲んでってよ……

 ……僕も飲もうかな……こういう日ぐらいは……さ…………」

「……客もいないし?」

最後に付け加えて、苦笑い。
.


65 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/05(日) 16:17:24



その後、僕らは三時間ほどバーで遊んだ。

遊んだというよりも、時間を徒に流しただけ。

マスターに「後ろの戸棚の内訳全部kwsk」とか、

マスターが僕達に「そのマントどこで買ったの」とか、

ショットガンしてむせたとか。

「だらしのない」

そう言ったマスターが一番むせていたとか、他にもいろいろ。



それでも、

最高の三時間が流れていったことには変わりなかった。



('(゚∀゚∩「じゃあ今日はこの辺で」

(´・ω・`)「ああ、なかなか楽しかったよ。夜道は気をつけてな」

「ここら辺はそんなに治安が悪いんですか?」

ヒッキーは笑っていた。
.


66 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/05(日) 16:17:48



涼しい夜道、月は段々老いていく状況だ。

確か二日前は満月だったっけ。



(-_-)「…………今何時だと思ってるの……」

('(゚∀゚∩「……10時」

(-_-)「……家に帰りつくの何時になるだろうね……」

('(゚∀゚∩「……さあね……」

(-_-)「…………いよいよ明日か……」

人生最後の日。それはヒッキーの中では既に決まっていること。

('(゚∀゚∩「……別に……生きてもいいんだよ?……」

ヒッキーは5秒経って突然笑い出した。

「無理に決まってるじゃないか……笑わせないでくれよ……本当に……」

気持ちの悪いぐらい、最高の笑顔だった。

無理もない。当然だ。

他でもない、

この状況を、ヒッキーの人生を愚弄しているのは

この僕だ。
.


67 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/05(日) 16:18:36

何も考えずに発言するもんじゃない

僕の浅はかさは意外と重症だ。

ヒッキーは死ぬことが決まっているからこうしている。

生きる希望なんて、生きるつもりなんて

とうの昔に無くなっているのだ。

どっちみち──そう、どっちみちヒッキーは死ぬ。確定事項だ。

だが、もう遅い。

もう電車に乗ってしまった。

ヒッキーは寝てしまった。

「どうでもいい」と言わんばかりに。

臆病な僕には

もう謝れそうにない。



数時間経って、僕らは最初の駅に戻ってきた。

「明日も迎えに来るから」

僕がそう言うと

「じゃ、おやすみ」

ヒッキーはそう、短く答えた。

その姿は、暗くて、よく見えなかった。

ずっと遠く、霧の中にいるようで。



僕は、まったくだめな奴だ。

夜の闇にいくら融けても、その念は変わらなかった。


.


[ 2000/03/07 19:21 ] 中篇まとめ | TB(0) | CM(0)

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