ブーンミコ酢 ブーン系過去作まとめ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[ --/--/-- --:-- ] スポンサー広告 | TB(-) | CM(-)

(-_-)は世界を救うようです 2

12 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/04(土) 16:31:52



【 二 】



(-_-)「それで?」

('(゚∀゚;∩「へ…………」

それで……って……

(-_-)「僕はこの世界のことなんてどうでも良いと言ったろ?」

('(゚∀゚∩「あ……ああ……」

そうだった。決めゼリフを吐いただけで目的が達成されたわけじゃなかった。

だが、ヒッキーは必ず踏みとどまる。……そうは思っていたが……

(-_-)「じゃ、話が終わったんならこれで」

また手摺りから身を乗り出した。

('(゚∀゚;∩「ま、待てって! 死なれたら困るんだよ!」

ヒッキーは呆れて言った。

(-_-)「……君が困ろうと知ったこっちゃないんだけどなあ……」

当然の返答だ。

自殺を決め込んでいる相手に自分本位な倫理が通るわけがない。
.


13 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/04(土) 16:32:34

('(゚∀゚;∩「み、三日で良いんだ! あしたあさってその次の日が終わるまで生きていてくれれば、

      後は君の自由にさせてあげるよ!」

(-_-)「……三日?」

('(゚∀゚∩「あ、ああ。それまで生きてくれれば世界は保たれるんだ」

どうも納得のいっていないヒッキーに言葉を畳み掛ける。

('(゚∀゚;∩「悪いようにはしないよ! 三日間、楽しませてあげるよ。

      なんでもいい、君の好きなことをさせよう。だから僕のわがままを聞いてくれ!」



ヒッキーは少し考えた後、言葉を漏らし始めた。

ふと、天を仰ぎ見、

(-_-)「……今日は……晴れている…………どうでもいいけど……」

空には星が浮かんでいた。雲は一切無かった。

月は100%の輝きを以ってここら一帯を照らしている。

「明るすぎるんだよ、まったく……」と、ヒッキーは付け加えた。



(-_-)「……さしずめ……君は世界の管轄者で……世界が滅びたら困る……

     僕はこの世界に必要とされている……四日目が始まるまで……

     ……まあ、かなり現金な世界だこと……」
.


14 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/04(土) 16:33:09



「分かった。承諾する」



「……明日の朝から、僕の部屋に来てくれ。僕の部屋は……君なら知ってるだろ?

 最後の三日間、楽しむというのも悪くない……どうせ『僕の世界』は終わるんだ……

 みんなの世界にいくらか迷惑をかけて死ぬのも……まあ、おもしろそうだ……」

ヒッキーの顔は少し笑っていた。本当に少しだけ。

ほくそえんでいるかのような、幽かな邪悪さを覗かせた。

「ありがとう」とだけ言っておいた。

言われた彼も変な気がするだろうが。

別に、僕のため、というわけじゃないのだろうから。



(-_-)「そうそう……」

振り返って、僕に言った。

(-_-)「そのマント、かっこいいね」

ビルの中に、消えていった。


.


15 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/04(土) 16:33:55

┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼

それにしても、

あいかわらずここは暗い。

「お帰り」

「ああ、ただいま」

「人間に干渉したモナね?」

「もちろんだよ!」

「…………ふざけるのはやめにするモナ」

おどけてみても叱責は容赦なく飛びつく。

「……悪かったよ……どうやって知ったんだい?」

「そんなことどうでもいいモナ。勘で鎌かけたら偶然当たったモナ」

「そうでしたか……」

「人間に干渉してはいけないのは知ってるモナ?」

「もちろんだよ!」

「…………一体誰に干渉してきたモナ?……」

っちぃ……今度は釣れなかったか……

モナーの、明らかに不快そうな顔を眺めながら、心の中に唾を吐いてやった。
.


16 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/04(土) 16:35:20

「誰でもないよ。……救世主さ……」

「……救世主?」

「多分君にはどうでも良いんだろうね。僕はこれからも干渉しまくってくるから後はよろしくねー」

ここはひとまず逃げとこう。

僕はいつもやっているように、闇に融け始めた。

「ちょ……待つモナ!…………」

へへっ。ざまぁ。

( ´∀`)「…………救世主……モナ?」

僕の目が融ける寸前、そう呟くモナーの顔が見えた。怪訝そうな顔だった。

何を考えるだろうか。

何をしようとするだろうか。

あいつにヒッキーのことは知られてはまずい。

なるべく分かりにくい表現で混乱させるように仕向けたが、

うまく行ってくれることを願うしかない。

今日はひとまず寝ることにしよう。

明日に備えて。

┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
.


17 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/04(土) 16:35:56



チャイムを鳴らす。

指が確実にボタンを押した。……?

鳴らない……。どうなってんだこの家は……

そこで、僕はドアを叩く作戦に変更した。

一発、二発、三発目で拳は空振りになった。

(-_-)「うるさいな……起きてるよ……」

('(゚∀゚∩「やっほー。起きてたのかい。……ところでチャイムが鳴らないんだけど?」

「やっほー」と言ったとき、ヒッキーは苦虫を噛み潰したような顔をしていた。

そして続けて、

(-_-)「電気止められた」

('(゚∀゚;∩「あ、そうか……」

淡々と答えるその声には、絶対的な力が籠っていた。

有無を言わせない強さがあった。

無論、有無を言うつもりは無いけれど。



(-_-)「ところで」

('(゚∀゚∩「ん?」
.


18 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/04(土) 16:36:49

(-_-)「どうしようか?」

('(゚∀゚∩「何を?」

(-_-)「今日は楽しませてくれるんだろ? だけど何するべきか分からないんだ」

('(゚∀゚;∩「あ……ああ……確かにね……」

昨日、僕がヒッキーに出会うまでは、ヒッキーにとってこの日は存在しなかった。

('(゚∀゚∩「……じゃあどうする?」

(-_-)「僕に聞かれてもな……」

('(゚∀゚;∩「いやいや、それはこっちのセリフだよ……」



空気が、止まった。

それが、本来のこの世界の姿なのか。

ヒッキーにとっては夢の中を彷徨っているようなものなのだろう。

それでも僕には時の流れが感じられる。風が吹きつけている。

('(゚∀゚∩「……じゃあさ……今欲しい物言ってみてよ」

とりあえず、目の前に目標を作ることが大事だ。

(-_-)「……?……ああ、なるほど……欲しい物ね……」
.


19 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/04(土) 16:37:33

ヒッキーは僕の後ろで風に靡いている物を凝視して、

(-_-)「……マントが欲しいな……」

('(゚∀゚∩「マント? 一体なんでそんなものを──

(-_-)「いいから。とにかく買いに行こう。欲しくなった。僕は金持っていないけど、君は持ってるんだよね?」

('(゚∀゚;∩「? あ、ああ。そりゃ持ってるけどさ……」

確かに金は持っている。僕は無限に金を持っている。僕らの特権だ。

(-_-)「じゃあ行こう」



ヒッキーは肩で風を切って歩き出した。

僕が「待ってくれ」と言う前に彼は立ち止まった。

(-_-;)「……マントってどこで売っているんだろう…………」

…………まあ……確かにマント買う人なんてそうそういないけど……

('(゚∀゚∩「……衣類売り場じゃない?」

答えらしきものならあっさり出る。

(-_-)「…………行ってみてから考えるのがいいね……」

また歩き出したが、もう肩で風を切れるほどじゃなかった。
.


20 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/04(土) 16:38:00



衣服の店に向かう途中。

些細な疑問をヒッキーに軽く当ててみた。

('(゚∀゚∩「…………ねえ……」

(-_-)「うん?」

('(゚∀゚∩「どんな色のマントが欲しいんだい?」

(-_-)「……うーん………………緑だね」

('(゚∀゚∩「緑?」

(-_-)「……深い……どこまでも暗い緑…………

     僕の好きな色なんだ……」

('(゚∀゚∩「……濃い深緑って感じ?」

(-_-)「……そうだね…………黒に緑を混ぜた感じの色でさ……」

('(゚∀゚∩「何でその色が好きなんだい?」

(-_-)「…………好き嫌いに理由なんて無いよ……」

そうだね。と軽く肯いた。
.


21 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/04(土) 16:38:44



数分経つと、僕らは衣類の専門店の中にいた。

さっそく、外套の売っているコーナーに行く。

ヒッキーの足は、なぜか速かった。

急ぐ必要もないのに、速かった。

彼はすぐに一つのマントを取って

(-_-)「これだ…………」

見事な緑色だった。

深く、濃く、闇を連想させるような緑色。

('(゚∀゚∩「それでいいのかい?」

(-_-)「ああ……」

('(゚∀゚∩「着てみてくれよ」

試着してもらわないと、困る。

いろんな意味で、気が引けるから。

(-_-)「そうだね……」
.


22 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/04(土) 16:39:24

その場で、ヒッキーはマントを羽織った。

結果はというと。

様になっている。

しっかりと、丈も合っているし、幅も合っている。

(-_-)「……似合ってる?」

('(゚∀゚∩「うん。いい感じだよ」

(-_-)「じゃあこれ貰おうかな……」



僕らはレジで会計を済ませ、外に出た。

ヒッキーは外に出るなりマントを羽織りなおしたが、「暑苦しい」と言ってすぐにマントを畳んで腕に抱えた。

「せっかく買ったのに」そう言うと、「君はよくそんなものをずっと着ていられるね」

だと。

真夏の七月。それが普通か。



その後数十分、僕らは町を練り歩くことになった。

何も考えずに歩くと、自然とそうなる。
.


23 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/04(土) 16:40:04

(-_-)「…………あてがないね……」

('(゚∀゚∩「……まあねえ……」

やはり、ヒッキーもただのウォーキングには飽き飽きしてきたのだろう。

とはいえ、彼にとってしたいことは何なのか。したいことなど一つも無いのかもしれない。

いや、むしろその方が自然ではある。

心の中までは僕にも分からない。

('(゚∀゚∩「……君は気難しいからな……」

(-_-)「…………自分でもそう思うよ……」

ヒッキーは笑った。

笑うしかない。か。

(-_-)「……そうだ、遊園地に行こう」

('(゚∀゚∩「……遊園地?」

(-_-)「今まで行ったことがない。遠足とかでしか…………そして楽しんだことも……ないね……」

確かにヒッキーはそんな奴だった。

なあに、僕は知っているだけ。知っている『だけ』だ。

('(゚∀゚∩「…………今では……遊びたくなったのかい?」

(-_-)「……いや……違うと思う」

ヒッキーは、また笑った。

自嘲気味に。
.


24 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/04(土) 16:40:54



それから電車を使って、近くのテーマパークに行くことにした。

「僕は階段の昇り降りにかけてはかなり自信があるんだ」

駅に入るとき、ヒッキーは突然そう言って、僕に勝負を挑んだ。

僕はその勝負を引き受けることにした。

結果。

僕の負けだった。

ヒッキーは本当に速かった。

階段の4段飛ばしは当り前。

そもそもスタートダッシュが、サービスなのか5段飛ばしだった。

「どうだい、なかなかのもんだろ?」

ヒッキーは勝ち誇ったような顔をした。

こんなことをしている自分に呆れながら。というような顔だった。

「ああ、なかなかのもんだった」

答えた自分まで、そんな顔になった気がした。
.


25 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/04(土) 16:42:03



歩くこと数分。僕らは遊園地に辿り着いた。

(-_-)「……ホントに金大丈夫なの?」

('(゚∀゚∩「え? 大丈夫だよ」

(-_-)「……いやあ……心配でね……まあ、マントぐらいならいいかと思って黙って奢られたけど……

     さすがに遊園地までもねえ……と思ってさ」

本当に、ヒッキーはいい奴だ。

('(゚∀゚∩「僕のことは心配するなよ。……金ならいくらでもある……」

そうは答えたが、それは違ったような気がしていた。

ヒッキーは、金のことだけを心配しているわけじゃない。そんな考えが僕の心に浮かんで、

それはやはり現実になった。

(-_-)「あ……いや……だからって金があるからとかそういう問題じゃなかったかな……」

('(゚∀゚∩「…………」

('(゚∀゚∩「わかるよ。気が引けるんだね」

(-_-)「……まあ、そういうことさ…………」

ヒッキーは遊園地のチケットをしっかり手に持ってそう言った。

それがどうも滑稽に思えたのは、僕がおかしいからだろうか。
.


26 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/04(土) 16:43:19



('(゚∀゚∩「コーヒーカップにでも乗ろうか?」

(-_-)「…………酔いそうだな……」

('(゚∀゚∩「この際さ、ハンドル全開で酔って酔って酔いまくって、そこらじゅうにぶちまけるってのもいいんじゃない?」

冗談半分。半分は本気だ。

僕も何かぶちまけたい気分だった。

(-_-)「……面白そうだけど、さ……」

面白そう、かつ、面白くなさそうに、会話は続いた。

(-_-)「酔っても自分が惨めになるだけじゃない……別に惨めな気持ちになってもいいんだけどさ……

     なんというか……めんどくさいな…………」

('(゚∀゚∩「……まあ、そうだね……じゃあメリーゴーラウンドにでも乗るかい?」

(-_-)「どっかいじって高速回転かい?」

('(゚∀゚∩「面白そうだ」

面白くなさそうなアトラクションは無いのか?

なんてことを言い合いながら、僕らはずっと笑ってた。
.


27 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/04(土) 16:44:11



もう日も落ちそうな時間になってしまった。

僕らは、そこら辺にあるアトラクション全てを制覇した。

絶叫物を除いて。

(-_-)「落下の恐怖は死ぬときだけでいい」

彼は一人呟いた。

('(゚∀゚∩「やっぱり恐いのかい?」

僕も絶叫物は嫌いだった。

(-_-)「ああ」

('(゚∀゚∩「……だよね……まったく」

(-_-)「楽しむために来てるのにさ、変じゃない。怖い思いをするなんてさ」

宙を駆け巡る鉄の箱を目の前に、ヒッキーは最高にシニカルになった。ニヤニヤしながら。

この世は言ったもん勝ちだ。

僕には『じぇっとこーすたー』なんかよりも、ヒッキーのほうが数倍大きく見えた。

('(゚∀゚∩「でもさ

      あの乗り物はどうだい? あれに乗って楽しい思いができるかな?」

僕の指先は、観覧車に突き刺さっていた。

今日は、あれにはまだ乗っていない。
.


28 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/04(土) 16:44:56

ヒッキーはじっとその回る物を見物して

「さあね。つまらなさそうだ」



「じゃあ、つまらない思いをするのも面白いかもしれない。乗ってみようか」

と、二言。



僕はすかさず承諾した。



( ´_ゝ`)「ときに弟者よ」

(´<_` )「なんだ? 兄者」

( ´_ゝ`)「客人だぞ」

(´<_` )「本当だ。客人だ」

観覧車の入り口のところにいたこの二人は、どうやら職員のようだ。

('(゚∀゚∩「観覧車に乗せてよ!」

(-_-)「あ、どうも…………」

(´<_` )「どうぞどうぞ。フリーパス持ってます? うんうん。じゃあどうぞごゆっくり」
.


29 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/04(土) 16:46:07



観覧車の中。

(-_-)「ねえ……」

('(゚∀゚∩「ん?」

(-_-)「さっきの従業員さあ……顔似てたね……」

('(゚∀゚∩「あの二人? そうだね。多分双子だと思うけど」

(-_-)「……あれは変な奴らだったね……」

吹いてしまった。

('(゚∀゚∩「wwwwちょwwwwwwwいきなり何言ってwww」

(-_-)「……見るからに変人だったじゃないか……特に兄者とか言われてたほう……」

('(゚∀゚∩「そう? 僕には弟者とか言われてたほうが変人だと思ったけど──

「多分どっちも変人だww」

僕らは、同時に気づき、同時に腹をよじった。

ほんとに、失礼な奴らだ。



(-_-)「そうだ……」
.


30 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/04(土) 16:47:34

ヒッキーは腕に抱えていたマントを羽織り始めた。

観覧車の中に、青褐のマントの男と鉄色のマントの男。

「どうみても闇取引だ」

まったくだ。と、一番変人なのは自分達だということに気づいて静かに笑う。



外は、すっかり暗くなっていた。

街灯りは燦然として。

頂上に到達した観覧車の中は未だに暗かった。



('(゚∀゚∩「…………なあ……」

(-_-)「……ん?」

('(゚∀゚∩「好きな子とか……いなかったのか?」

…………いなくても、おかしくなさそうだ。彼なら……

(-_-)「……いたよ……普通に考えて人生で一度も誰かを好きにならない人はいないでしょ……」

ヒッキーの答えがどうであれ、僕は何か物悲しくなった。

('(゚∀゚∩「……そりゃそうだよな……」

(-_-)「君はどうなの?」
.


31 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/04(土) 16:49:01

('(゚∀゚∩「…………覚えてないんだ……」

(-_-)「…………」

('(゚∀゚∩「かれこれ……この仕事始めて300年は経つんじゃないかな……

      僕も昔は生きていたみたいだけどね……」

(-_-)「……生きていた時のこと覚えてないの?」

('(-∀-∩「……ああ……もうそりゃ……僕は、いつでも生きられて、いつでも死ねるような存在……

       そんなものになって300年も経てば……生きていたという事実も、どうでもいい事実……」

('(゚∀゚∩「……僕に好きな人がいたかどうかなんてこともね…………」

……やっぱり自分で言ってしまうとと悲しくなる。

どうでもいいはずなのに。だ。

(-_-)「…………」

無意味に、いや、それでも確実に静寂は続いた。



ヒッキーが口を開いた。

(-_-)「……本当に……バカバカしい……生きているのなんてさ……

     世界の動きに合わせて…………僕らは動いているだけなのか?」
.


32 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/04(土) 16:49:43

僕は、静かに頷くことしかできなかった。

僕も、そんなバカバカしい世界の一員で、彼もそうだ。

ただ

('(゚∀゚∩「……んじゃあさ…………この世界が想定しなかったことを起こしてみないかい?」

(-_-)「ん? どういうこと?」

('(゚∀゚∩「……あと二日経ったら死ぬつもりなんだろ?……その好きだった子にちょっとアタックしてみれば?」

(-_-)「…………死ぬのにかい?」

ヒッキーは厭な物を見る目をしていた。僕の方を向いているわけじゃなく、この世界全てをそう見るように。

('(゚∀゚;∩「……無神経……だったかな…………それでも後悔だけはしてほしくないからね……」

それは本当だった。

彼にも、後悔しない権利ぐらいある。

世界が、いくら彼を後悔させたがっているとしても。

(-_-)「…………迷惑だろ……」

('(゚∀゚∩「……君はこの世界に迷惑をかけていきたいんじゃなかったのかい?」

多分違う。それは分かってた。
.


33 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/04(土) 16:50:16

(-_-)「……そうだね……迷惑をかけようか……」

('(゚∀゚;∩「…………はあ?」

それでもヒッキーは期待を裏切る。

(-_-)「…………伊藤に……好きだったって言って……玉砕して──



「彼女に知られないようにして死のう……」



伊藤。ヒッキーの好きな人の名前だ。

『知られないようにして』

ヒッキーの表情には一切変化が無かった。

ねえ、それどういう意味だい?

僕には、そう訊く勇気が無かった。



僕は観覧車から近づく地面を眺めた。

(∀゚∩「…………終わりだね……」

(-_-)「……そうだね……」
.


34 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/04(土) 16:51:11

観覧車の入場場所を見た。

( ´_ゝ⊂(´<_`#)

( ´_ゝ`)「痛いじゃないか」

(´<_`#)「うるさい。お前が変なこと言うからだ」

……従業員の兄弟が喧嘩をしている。

('(゚∀゚;∩「……やばいよ!……どうする……?」

(-_-)「…………まあ、とりあえず様子を見よう……」

喧嘩するほど仲が良いとでも言いたいのだろうか?

ヒッキーはどこまでも傍観的だった。



(#´_ゝ`)「俺のどこが変なんだ? え?」

(´<_`#)「『俺もマントが欲しい』と言ったことだ!」

(#´_ゝ`)「マント、かっこいいではないか!」

(´<_`#)「はあ? さっきの二人に感化されただけだろうが!!」
.


35 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/04(土) 16:51:57

(#´_ゝ`)「何を?! 昔からあんなのに憧れていたんじゃーい!!」

(´<_`#)「はあ? あんな変人の真似することにか?」



('(゚∀゚∩「」

(-_-)「…………」

('(゚∀゚∩「……変人…………ね……」

なんだか頭が真っ白になった。

確かに変人であることは否定しない。むしろ、さっきは確かにその通りだと思っていたのだ。

ヒッキーの表情は、さも当り前のような感じだった。

達観してるね。



(´<_`#)「…………ったく……もう大人なんだぞ?」

弟者は、兄者を起こして、後ろを振り返った。

Σ('(゚∀゚;∩「はっ……」

Σ(;´_ゝ`)(´<_`;)そ「うあっ……」
.


36 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/04(土) 16:52:45

目が合ってしまった。

(;´_ゝ`)「……弟者…………?」

(´<_`;)「ん……んーん……んんん?……」

('(゚∀゚;∩「…………」

(-_-)「…………」

ヒッキーだけは少しだけニヤニヤしていた。

(´<_`;)「あ……あの……その…………」



(´<_`;)「……そのマント、カッコイイですね……」

('(゚∀゚∩「…………」



「ありがとうございます」

僕らはそそくさと立ち去った。

('(゚∀゚;∩「……まったく……人の悪口は言うもんじゃないね……」

(-_-)「……まったくだよ…………」

「変人」と、先に言っていたのは僕らのほうだった。
.


37 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/04(土) 16:53:35



('(゚∀゚∩「…………ヒッキー……?」

(-_-)「ん?」

('(゚∀゚∩「…………空が綺麗だね……」

僕は何を言っていいのか分からなかった。

空は、そんなときに役に立つ。

(-_-)「…………そうだね……とっても綺麗だ……」

今日は闇黒。

街の灯りが酷いのか、星は見えないし、雲は見事に月を殺している。

しばらく、沈黙が続きそうだ。

(-_-)「……ねえ……」

('(゚∀゚∩「え?」

僕の予想はすぐに外れる。

ヒッキーはいつも予想外なことをしてくれる。

(-_-)「地球ってなんで回ってるんだろうね?」
.


38 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/04(土) 16:54:13

('(゚∀゚∩「……難しい問題だね…………」

辺りを見渡した僕の目には、

あの回転する物達が見えた。

僕は、自分の妄想に、正直感心して、笑った。

笑わずにはいられなかった。

('(゚∀゚∩「……観覧車とかが回る理由とおんなじじゃないかな……?」

今では、そんな風に本気で思った。

(-_-)「……へえ……じゃあ地球なんか回して……誰かが儲かってるのかな……?」

('(゚∀゚∩「……そうかもしれないね」

(-_-)「……入場料は何だろうね?」

('(゚∀゚∩「…………僕らの愚行を見て楽しむことじゃないかな?」



あははははは

おっかしいな、

笑っちゃうよ。

('(^∀^∩「……本当に……バカバカしいよ…………へ……へへ……」

ヒッキーの口の端も、吊りあがっていた。
.


39 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/04(土) 16:54:56

なんか、もう、どうでも良かった。



遊園地から出た後。

('(゚∀゚∩「ヒッキー! 明日は伊藤さんのところ行って玉砕するぞ!」

(-_-)「…………ああ……もちろんだ……」

最高にテンションは上がっていた。

さあ、この世界を踏み荒らしてやるんだ!

そんな感じのテンション。

そう、僕らは明らかに正常じゃない。

('(゚∀゚∩「じゃあ、明日も迎えに行くから待っててくれよ!」

(-_-)「分かった」

僕はヒッキーのもとを去った。

走って。

まっすぐな一本道の中、

そのままあの世界に消えることもできたが、

僕はそのまま走っていきたかった。

この長い一本道を、滑走路にして。


.


40 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/04(土) 16:55:40

┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼

「お帰りモナ」

「ああ、ただいま……」

烏羽色のマントが、お出迎えしてくれた。

「?……どうしたモナ?……何か良いことでも?」

「……分かるかい?」

「顔、よく見てみるモナ」

ニヤついてるんだろう。自分でも分かっている。

「え~? 分からないよ~。あいにく鏡無いだろ? ここ」

「ほら」

モナーは淡々と手中に鏡を出現させ、僕に向けた。

「……ったく……いつの間にそんなもん手に入れたんだよ……」

僕は精一杯呆れた。

だが、呆れられているのは僕だ。

「……なかなか分からないモナ」

「何が?」
.


41 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/04(土) 16:56:21

「救世主モナ」

自分のした間違いに気づいた。

昨日、モナーにそれだけでも言うべきじゃなかった。

後の祭りだ。

「……救世主って……君には関係ない話だろ?」

「関係あったら大変だろ?」

「…………関係あっても大丈夫だって……君には迷惑かけないからさ……」

嘘だ。多分迷惑はかかる。

だが、大したことじゃない。

怒られてもモナーなら分かってくれるような気もする。

「……自分だけのことを心配しているわけじゃないモナ」

一気に、自分の周りが遅くなったような気がした。

「…………何かとんでもない規則違反をしたら、君の身が心配なんだモナ」

こんな奴なんだ。分かってくれるよな。きっと。

「……規則違反したって別に罰せられたりしないだろ?」
.


42 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/08/04(土) 16:57:16

「……! そんなことを言ってるんじゃないモ──

「それと!!



 …………ありがとう……心配してくれて……」

本当の気持ちだ。

こればかりは。



モナーは、一回溜息を吐いた。

そりゃあ溜息も吐きたくなる、分かるよ。

「……………………大丈夫モナね?」

「…………うーん……もう疲れたし……寝ようと思うよ……」

「……そうモナね……おやすみ……」

モナーは先に、闇の中に紛れて消えた。



僕の姿もその場から消えた。

どう処理すればいいかわからない、溜息を残して。

┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼


.


[ 2000/03/07 19:20 ] 中篇まとめ | TB(0) | CM(0)

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://boonroop.blog5.fc2.com/tb.php/35-78e52a5b








上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。