ブーンミコ酢 ブーン系過去作まとめ

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('、`*川チューリップの花言葉のようです

1:◆cnn1cgiuMM
10/24(金) 00:25 ePsekCxR0


一人、泣いている。

もう一人は慰めることもできないくせに、手だけは差し伸べる。

手は、空を切り、決してつかむことはなかった。

それでも、差し伸ばし続ければ、その思いはかならず届くと信じて。

二人の間には、越えられない壁が立ち塞がっているというのに。





('、`*川チューリップの花言葉のようです


2:◆cnn1cgiuMM
10/24(金) 00:28 ePsekCxR0

……目が覚めれば、気分は最悪の一言だった。
いくら体を伸ばしても、どこも変わらない。
季節はもう春だというのに、すがすがしい気分はどこにもない。

顔を洗いに洗面所にいけば、
そこには目を真っ赤に腫らしたウサギが一匹。

先輩は、オレのことをよくウサギにたとえた。
理由はなんてことはない、オレの目がたびたび赤く腫れていたからだそうだ。
そこに可愛らしさや愛しさが含まれていないことにオレは少し悩んだが、先輩がそれでいいなら、別にいい。

もっとも、先輩は目を赤く腫らしたオレの事情など知る由もないだろう。


手短に支度を整え、憂鬱な気分のまま朝食をとる。

淹れたばかりのコーヒーはほろ苦く、幾分かは気分を紛らわせてくれた。

いってきます、と日常を装っては見たものの、オレにとっては一番来てほしくなかった日なのだからまるで意味はない。

家を出て、何分か歩くと桜の花弁がオレの視界に入ってきた。

3:◆cnn1cgiuMM
10/24(金) 00:30 ePsekCxR0

――入学して間もない頃、オレはいつものように、部活の勧誘の間をすり抜けて何とか捕まらないようにしていた。
もともと部活に入る気などなく、ましてや美術部なんてまるで興味がない。

絵はある程度は描くことができる、が人並みだ。

そう、オレが美術部の勧誘を受け入れてしまったのはあの人のせいに違いない。

あの日の先輩は、その小さく華奢な体であちこちを走り回っていた。
無論、部活の勧誘のためだ。


('、`*川「お願いしまーす。美術部でーす」

桜のようなほんのりとピンク色に染まった頬は今でも思い出せる。
それがオレの体の中に飛び込んできたのだ。

('、`*川「お願いしまー……っわ!」

余所見をして走るからこうなるんだ、などとオレが言えるはずもなく。
ぽすんと胸の中に納まる先輩は勢いよく離れると、桜を薔薇に変えて謝ってきた。

('、`*川「ご、ごめんなさい。あら、あなた新入生よね。もしよかったら……コレ」

上目遣いでオレを見上げるな。なぜかどきどきしてしまうじゃないか。
不思議と高鳴る鼓動を抑えつつ、俺は手渡された用紙を眺めた。

('、`*川「興味津々って顔にかいてあるわ! よし部員一人ゲット!」

そういって駆けてく彼女の後姿と用紙を交互に眺めるオレは、通行人にとって邪魔だったろう。

('、`*川「美術部でーす! お願いしまーす!」

それほどその場で呆然とこの目は追い続けていたのだから。

4:◆cnn1cgiuMM
10/24(金) 00:34 ePsekCxR0


――と、変に思い出を蒸し返すのはよそう。
なんたって、今日は、先輩の大事な卒業式なのだから。
先輩から卒業する、大切な日なのだから。

5:◆cnn1cgiuMM
10/24(金) 00:35 ePsekCxR0

校門に着くと、この日のためか、色とりどりの花が咲き乱れていた。
中でもオレの目に飛び込んできたのはチューリップだ。

赤白黄色。

そういえば、以前チューリップの花言葉を調べたことがある。
なんだっただろうか。

6:◆cnn1cgiuMM
10/24(金) 00:37 ePsekCxR0

('、`*川「おはよ、何を見惚れているの?」

おはよう、先輩。そりゃ見惚れもするだろうさ。

('、`*川「そうねぇ。今日で終わりなんだと思うと感慨深いものがあるわ」

ま、オレはあと一年この門をくぐらないといけないけど。

('、`*川「一年なんて、あっという間よ。あなたにとっても、私にとっても、ね」

そうだな、あっという間だったな。
特にあの日から。
一緒にいる時間が、幸福と不幸がごちゃ混ぜになったような感覚を覚えてからは。

9:一気に投下◆cnn1cgiuMM
10/24(金) 22:34 ePsekCxR0

('、`*川「……そうそう、あなた、放課後に美術室集合ね。いい、絶対よ」

そこまで念を押されると、拒否できないじゃないか。
いわれなくても部室にはいくつもりだったけど。

('、`*川「じゃ、またあとでね」

手を振り駆けていく先輩。その背中は、初めて出会ったそれとまるで変わらなかった。

校舎に入っていく先輩をぼう、と目で追う。

変わったのはオレのほうだ。
一年という時間は、残酷すぎるほどオレの気持ちをかき乱した。

10:◆cnn1cgiuMM
10/24(金) 22:41 ePsekCxR0

時間はあっという間に過ぎ、ほとんど上の空で、気づけば式は終わっていた。
周りのみんながいっせいに立ち上がるのに遅れて、慌ててそれにならうと、大きな拍手が沸きおこった。

在校生の間を卒業生が通るとき、先輩と一瞬だけ目が合い、手を振ってくれた。

けれど、オレはそれに答えることなどできなかった。
なんとも情けない、と自分をぶん殴ってやりたかった。

ああ、先輩は今どんな気持ちなのだろうか。

自分の気持ちすらうまく表現できない者が、人の気持ちなど理解する余裕なんてないのだ。

オレはそのことに気づき、声を殺して涙を流した。
声を上げてしまったら先輩への気持ちも飛び出してしまうだろうから。


11:◆cnn1cgiuMM
10/24(金) 22:42 ePsekCxR0


かすんだ視界は部室へと続く廊下を重く変化させた。
この気持ちはいったいいつまで続くのだろう。

12:◆cnn1cgiuMM
10/24(金) 22:44 ePsekCxR0

美術室の鍵は、開いていた。
先輩と過ごした、長くて、けれど短い時間が詰まっていた部室は、オレの涙腺をまた刺激し始めていた。

('、`*川「やっと来たわね。ハイン。待ちくたびれちゃった」

从 ゚∀从「……先輩」

('、`*川「あら、ウサギは相変わらずね。さびしくて死んじゃいそう? ……女の子なんだから、ほら笑顔笑顔」

先輩がハンカチを差し出してくる。
オレはそれを受けとらず、そっぽを向いて近くの椅子に乱暴に座る。

从 ゚∀从「余計な、お世話だ」

('、`*川「変わらないわね。昔とおんなじ」

それきり、無言の時間が続いた。
呼吸音すら空気を読んで音を発しない。
けれど、無音この空間が、どこか居心地がよく感じられた。

13:◆cnn1cgiuMM
10/24(金) 22:48 ePsekCxR0

('、`*川「ねえ、ハイン」

先輩はゆっくりと口を開く。

从 ゚∀从「……なに」

('、`*川「コンクールには出せなかったけど、とても大切にしていた絵があるの。見たい?」

从 ゚∀从「いや」

('、`*川「ふふ、そういうと思ったわ」

先輩は布のかかったカンバスを、その細く繊細な手でわが子のようになぞる。
そのしぐさに、オレはどうしようもない愛しさを感じた。

('、`*川「ねえ、ハイン」

从 ゚∀从「……なにさ」

('、`*川「この絵がだめなら、私は何をあなたにあげればいいの?」

何も、ほしくない。本当にほしいものは、

一生かかっても手に入らないものだから。

14:◆cnn1cgiuMM
10/24(金) 22:50 ePsekCxR0

なら。

それならばせめて。

小さくてもいい。

他の誰も知らなくていい。

一方的なオレが愛した者への証を――。

15:◆cnn1cgiuMM
10/24(金) 22:51 ePsekCxR0


从 ゚∀从「……オレは。オレが欲しいのは。先輩の――」

二人の距離が近づく。

お互いの心音すら聞こえそうなほどに。

オレの鼓動はまるで太鼓のように大きく響く。

先輩のやわらかそうな耳に口をそっと近づけて。

从 -∀从「先輩の――――を」

('、`*川「……ふふ、やっぱりあなたはウサギだわ」

先輩は優しく微笑み、オレの頭を撫でた。

16:◆cnn1cgiuMM
10/24(金) 23:00 ePsekCxR0

先輩の絵と一緒に残されたオレはオレンジに染め上げられた。
窓に近寄りと、校門に植えられたチューリップが個性なく一色に見えた。
夕暮れが、こんなにも悲しいものに見えたのは、いつ以来だろう。

从 ゚∀从「……ああ、そうか。思い出した」

黄色のチューリップの花言葉。

从 ゚∀从「オレの恋は叶わない恋。望みのない恋だったんだ」

それでも、オレの愛は届いていたのだろう。

この絵に描かれた二人の恋人は、今も手をつないでいて、
幸せそうな笑顔を浮かべているのだ。

絵にそっと触れると、温かいぬくもりを確かに感じる。

それは、オレの中にできた心の隙間を少しだけ埋めてくれた気がした。

从 ゚∀从「さようなら、先輩」

夕暮れの中、オレはそっと先輩の第二ボタンにキスをした。



―了―


参考 
チューリップの花言葉

赤 愛の告白・愛の宣告
白 新しい恋・失われた愛・失恋
黄 名声・正直・実らない恋・望みのない恋
紫 不滅の愛・永遠の愛・私は愛に燃える
緑 美しい瞳
桃 恋する年頃・愛の芽生え・誠実な愛
斑 疑惑の愛

チューリップ品種ごとのの花言葉

アンジェリケ 夢
モンテカルロ 名声
アップスター 天真らんまん
[ 2008/11/18 20:19 ] 短編まとめ | TB(-) | CM(0)

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