ブーンミコ酢 ブーン系過去作まとめ

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(,,^Д^)は奪って堕ちてゆくようです  まとめ読み

2 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/15(日) 16:41:00
───────────────────
   始まり   二人のエピローグの序章
───────────────────



「またここに戻ってくるとはな……」

「懐かしいわね……」

僕らの過ごした、町

僕らの傷ついた、街

ずっと昔のことだ

「……でぃさん?」

暗めの夕方

「何?」

更に暗めの路地裏

「……僕は……君に何かを与えられたのかな……?」

「……どうしたの? 唐突に」

「君からは……貰ってばかり……いや、奪ってばかりだった……」

「今に始まったことじゃないじゃない」

皮肉。

「厳しいなあ……」

「……ふふふ……確かに……不便なこともあるけどね……」

「今に始まったことじゃないね……」

自虐癖。

「そうね、その通りよ……どうせ……あのままじゃ進展は無かっただろうし……」

でぃさんは華麗に返す

「……なんでそんな唐突なこと言ったかっていうとね……」



「そろそろ死にたくなったんだ」
.



3 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/15(日) 16:41:54

「……どうして……?」

でぃさんは綺麗な目で僕を見る

「……ほら、……もう生活できなくなってきてるだろ?」

「……仕方ないじゃない……仕事柄……」

安心させるための気休めかい?

「仕事柄とか……そういう問題じゃない……需要が少ないんだ……」

「一過性のものでしょ?」

それでも嬉しいよ、無いよりかはましだしね。

「……本当はそうは思ってないんだろ?」

でぃさんは少しだけ黙った

僕が君に反抗するなんて、やっぱり珍しいかい?

「……ええ……分かってるじゃない……」

「もうさすがに分かるよ……いくらバカな僕でも……」

「……ところで」

「何だい?」

「……なんで死にたいの?」

さっき理由を言ったじゃないか…………僕は「本当」の理由を考え、白状することにした。

「…………チキン……だからかな……」

でぃさんは、それだけで僕の言いたいことが分かったようだ

「……そうね……私もチキンだから安心して……」

よくよく考えれば、意味不明な慰めだ。

感じ取ってくれ、というわけだね。

「……ありがとうね…………」
.


4 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/15(日) 16:43:06

「……タカラ君って……本当に優しいのねえ……強がっても、絶対に強くなれない……

 ……強くならないと言うべきかしら……今に始まったことじゃないけど……」

煮え切らないだけさ。

「でも……ここまで来といて……僕、何言ってんだろうね?」

「……それがタカラ君の良いところじゃない……堕ちるなら……どこまでも一緒に堕ちましょう……」

甘い上目遣いで、僕を見る

「……ん……そうさせてもらうよ……」

どこまでも堕ちる。そんなことはとっくに決めていたのに

( ・∀・)「あのー……」

Σ「はっ!!」

暗めの路地、懐中電灯の明かりは

巨大なサーチライト。

( ・∀・)「こんなところで……何してんですか?」

警官

「……いや……なんでも……」

( ・∀・)「……あんたら……何か見覚えが……」

見覚え……あるのか……?

(;^Д^)「…………気のせいでしょ……行こうか……」

指名手配とかじゃないだろうな……

(#゚;;-゚)「……え、ええ……」

Σ( ・∀・)「あっ! 思い出したぞ」

やばい。

(;^Д^)「逃げて!!」
.


5 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/15(日) 16:44:17



僕らは

追われる人間

少しだけ反応の遅かったでぃさんの手を引っ張って

でぃさんもそりゃ疲れるよね

人形のように美しく、細い足

君には負担掛けてばっかりだ

僕も疲れているんだ、正直に言うと。



ああ、後の警察官が無線で連絡している……

なんであれ使わなかったんだろ……逃げるの下手になっちゃったな……

これ以上……僕には無理かもしれない……いろいろと……

何度もそう思ったこともある。……なんとか無理を成し遂げてきたけど……

とにかく……今は休む所を探そうね……でぃさん……

せめて今日だけはもう少し明るいところへ……








(,,^Д^)は奪って堕ちてゆくようです




.


6 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/15(日) 16:45:27
───────────────
   上の上   普通の高校生
───────────────



空を見てみる。

晴れ渡る空に散らばった一面の雲

曇っているところもあれば晴れているところもある。そんな感じだ。

雲の間から差す光が教室に侵入してくる

( ´∀`)「テスト返すモナー」

僕はその言葉で我に返る

だが、僕の番まではまだまだ回ってこない。

僕は教師の声を耳に入れながら外を見た

いい感じの空だ

僕は好きだ

( ´∀`)「タカラ」

(,,^Д^)「はい」

テストを取りに行く
.


7 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/15(日) 16:46:13

普通の点数

点数なんてどうでもいいのさ。

親にも見せないし、親も見ないし

別に将来を期待もされていない

そんな子供がどうなろうと知ったこっちゃ無いのさ



何の独白だろうか、自分の頭は妄想に取り憑かれているようだ。

惨めなものだ

誰にも話しかけることなんて無い

なのに誰かに分かってもらいたいと思っている

だから独白

惨めなものだ



僕の頭はこんがらがったまま、停止していた

分かってほしい人なんて一人しかいないのに
.


8 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/15(日) 16:46:48

そんな停止した頭もやけくそで独白を再び始める

僕の両親は共働き

家に帰っても誰もいない

誰とも関わりたくない

面倒なことに巻き込まれないように

毎日の授業も退屈だ

(*゚ー゚)「ねぇ……タカラ君?」

(;^Д^)「え?……何?」

(*゚ー゚)「消しゴム貸してくれない?」

ほら、邪魔者だ。しぃって名前だったっけ。

(,,^Д^)「……どうして持ってないの?」

(*゚ー゚)「今ちょうど使えなくなったの」

いつも僕に言ってくる

(,,^Д^)「ああ……そう…………ほら……」

なんで貸してやらないといけないのかな…………

そう思いながらも、八方美人の僕の手は勝手に消しゴムをしぃに渡していた
.


9 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/15(日) 16:47:43

そんな僕を、でぃさんは見ていた

(#゚;;-゚)「…………」

僕がそのことに気がついて眼を合わせ返すと、彼女はすぐに目を逸らした

わざとじゃないだろう。彼女は優しいし。

僕は目を逸れされるほど変なことをした覚えは無い

(,,^Д^)「…………」

それでも僕の眼はずっと彼女を見続けていた

僕は、でぃさんが好きなんだ

そのことに気がついたのはずっと前

頭も良いし。優しいし。美人だ。

清楚な感じが本当にいい。

パーフェクトだろ……僕にはもったいないぐらい

でも、彼女には友達がいないみたいだった。誰にも好かれていないみたいだった。

原因は、幼い頃に母親から受けた虐待痕。

なんでも、噂では父親はでぃさんを庇おうとして母親に殴り殺され、

母親は捕まってずっとブタ箱にぶち込まれているそうだ

なんと不憫な話だろう。僕の脳がそう喋る。

偽善。
.


10 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/15(日) 16:48:19



全てが嫌になる

僕は空にそう呟いた



気づいたときには、消しゴムは返ってきていた



あっと言う間に終わる世界

なんかアホらしい



僕は普通の高校生

至って普通の高校生

両親は共働き。友達はいない。学校はつまらない。好きな子がいる。

普通の高校生さ。

僕はね。

面白くないんだよ。



何か起こらないか。

そう思っていた矢先、荒巻という変態に出会ったんだ。


.


11 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/15(日) 16:49:42

/ ,' 3 「わしの名前は荒巻というんじゃが……おぬし、力が欲しくないかね?」

Σ(;^Д^)「…………」

はあ?

何言ってんだこのおっさん……

随分年食ってんなあ……



学校からの帰り道

ちょっと人通りの少ないところにその変態はいた

真っ白なローブ。いかにも仙人。

まあまあ治安が良かったので、僕はたまに気分を変えるためにたまに通っていた道だった。



(,,^Д^)「……力……?」

/ ,' 3 「そうじゃよ。力じゃ。人智を超えた力が欲しいじゃろ?」

信じているわけがない。

おっさんをからかうつもりで「興味がある」と答えた。

面倒は嫌だったっていうのに、答えてしまった。

それは吉だったのか凶だったのか

吉だと思い込まないと、やってられないよ。
.


12 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/15(日) 16:50:40

/ ,' 3 「じゃ、ほれ」

ほれ?

荒巻というおっさんは僕に何かを放り投げた

ようなアクションをした。

/ ,' 3 「ほれ、これでおぬしには力が備わったぞい」

(;^Д^)「…………どんな……?」

ふざけんなよ、このクソじじい。

/ ,' 3 「そうじゃな…………じゃあ、あのカラスに向かって『飛ぶ力を奪え』と念じてみよ」

荒巻はそういって、空を飛んでいる二羽のカラスを指さした

(;^Д^)「……は……はあ……」

何言ってんだよ……

恐怖心さえも出てきた。

僕は少し引き気味になりながらも、カラスを見、念じてみた



『飛ぶ力を奪え』


.


13 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/15(日) 16:51:43

なんだ? これは



二羽のうち、僕が念じたほうだけ、落ちた



自分でも何を言っているのか分からない。

「え……」

思わず声に出た

黒い物体が、落ちた

高い空から、落ちた



堕天使の姿



ホントに、失速して落ちた。

念じなかったほうは、落ちた奴を見て、そのまま飛び去っていった

死んだのかな……

/ ,' 3 「ほほう……ちゃんと力はついているようじゃの……」

ほほう……じゃねえよ。

僕は少し怪訝そうな眼で睨んでやった。

/ ,' 3 「おぬしに与えた力は『対象物の感情・意識を奪う』というものじゃ

    だが、わしの力を受けた能力者相手には通用しないから、間違っても戦いに使ってはならんぞ

    おまけに、能力者に技をかけたときは、その内容が伝わるからの。わしも能力者じゃから、

    おぬしが何を言っても無効じゃ。試してみよ。」



…………なんか凄そうだな……

僕は信じられない速度でその世界に引き込まれていたようだ。
.


14 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/15(日) 16:52:31

(,,^Д^)「じゃあ早速……」

意識を荒巻に集中して……



『立つ力を奪え』



/ ,' 3 「今、立つ力を奪えと念じたな?」

(,,^Д^)「え、ええ……」

……これはやばい。

論理的に言っても、直感的に言っても、変わりは無い。

絶対的に、凄い世界に触れてしまった。

/ ,' 3 「あと、その力は『奪え』と言う命令表現でしか使えないから注意することじゃ。『無くせ』ではだめじゃ。

     自分自身に命令をかけるようにな」

(,,^Д^)「……は、はい……」

面倒なルールだ

/ ,' 3 「それと、持続するような命令の解除は、そう念じれば解ける。念じなくても、

     対象物に対しておぬしの意識が向かなくなれば、自然に消えていくぞい。

     ……で、わしが言っておかねばならんことはこれぐらいじゃろう。では、さらばじゃ」

Σ(;^Д^)「え?! ちょ、ちょっと!」

僕が荒巻のほうを見たときには、超絶な速さの後姿に変わっていた。
.


15 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/15(日) 16:53:39



僕の人生の岐路だった。

18で、こんな岐路に立たされるとは思っていなかった

僕はこの力を持って、

強くなった気がした。

何もかもがうまくいくような気がした。

情けない。

アホらしい。

自分に対する嫌悪感はそのままに、

それでもいいじゃないか

適当さや、寛容さ

自分に対する全てが

甘く、おいしくなった

僕は言うんだ。

全てを分かった上で

「それでもいいんだ」と



不敵な笑み

こんな感じかな、と

商店街のガラスに投影された自分の顔を見ながらそう感じた



──────────────────
   上の上   普通の高校生   終
──────────────────


16 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/16(月) 18:13:08
───────────────
   上の中   くだらないこと
───────────────



それにしても、荒巻というあの男、何者だったんだろう

どうでもいいことだが。

家に帰る道、そんなことを考えていた

そうやって歩いていると、交差点に引っ掛かった

信号は赤だ

僕の左前方に、「いかにも」って奴がいた。

ああ、やっぱりだ

車側の信号が赤になった。まだ歩行者側の信号は赤じゃない。

それでも奴は歩いたんだ

だから止めてやるのさ



『青になるまで待て──信号無視をしようとする気持ちを奪え』



奴は止まった。なんか呆然としている

さぞかし変な気持ちになっただろう

僕は間抜けな「奴」を見て少しほくそ笑んだ。
.


17 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/16(月) 18:14:11

さあ、青だ

存分に歩くがいい

僕は奴から意識を放し、横断歩道を渡った

奴よりも速く。ね

下らない優越感に浸ってやる。



そんなこんなで家に帰りつく

親はいない

一人、制服やらなんやらを脱ぎ散らかす

僕は眠ることにした。

どうでもいいや。

力の使い道なんてどこにあるんだよ

よくよく考えてみると、変な話だ

人を自由自在に操れるという力をもったところですることなんてほとんど無い

それに、僕の力はそこまで有能じゃない

単に、人を妨害するだけのもの。

だから面白い遊びを思いつくまで眠るのさ
.


18 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/16(月) 18:15:04



親が帰ってきた。11時

どうでもいいよ。

僕は既に寝ていた

歯も磨いて、風呂にも入って

寝たのさ

明日は学校が休みだ

何して遊ぼうか



やっぱりこの能力を存分に使って遊ぼうか



そんなこんなで僕は次の日、公園に繰り出した

wktkしながら

皆はどんな風に僕を笑わせてくれるのだろうかと


.


19 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/16(月) 18:15:46

朝食も摂らずに家を出る

鍵をかける

正真正銘誰もいない家

それを尻目に公園へ出かける

晴れ渡った空

僕はこんな空が好きだ

微妙に曇っている長閑な昼の陽射しも好きだけど

水色の中に一際輝くオレンジも、この季節なら好きだ

どうでもいいこと、だけどね



公園

近所の子供がうるさい

爽快な騒音

それを僕は奪うことができる

『騒ぐ気を無くせ──発声する気を奪え』
.


20 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/16(月) 18:16:18

急に静かになる

親も不思議そうだ

子供達は平気そうだがね

ただ、走り回る

なるほど人形のようだ

小鳥のさえずりだけが響き渡る

不思議なものだ。面白くない

子供のうるささは有ってしかるべき、というわけか

子供が再び騒ぎ出す

力を解除した。どうでもよくなったから

子供──

子供子供子供──

平衡感覚を奪えばそれは面白いことになるだろうな……

でも、しない。

なぜそんなことをしなければならないのか
.


21 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/16(月) 18:17:03

良心じゃない

「なぜしてはいけないのか」という問いに対して答えられない場合

「してもいい」ということになる

だが、逆に「しなくてもいい」ということでもある

だからしない。

全てが自由の今、選択権は僕にある

どう使おうと僕の勝手

いつの間にこんなにいい身分になったのかねえ

自分を嘲る。

自分の思い上がりを嘲る

でも、僕はその思い上がりに従う

皆、

僕を見ておかしいと思うかい?

ま、

あんたらがどう思おうと勝手だけどね

誰もいない空間に、心の中で語りかける
.


22 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/16(月) 18:18:03

足元を見ると、蟻がいた

じっと、黒い生き物を見つめる

黒い生き物、黒い動物、黒い動く物体

修飾語を取ると

物体

(,,^Д^)「『mother mを○ったら──other 他○です』……ってか」

僕の脳みそに、懐かしい衝突球の映像が流れた



『動く力を奪え』



なんと。

動かなくなった

非常にだるそうだ

そりゃ、昨日のカラスだって落ちたんだ
.


23 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/16(月) 18:18:55

『元に戻れ』

そう念じ、蟻を再度動けるようにする



『氏ね──命を奪え』



憎かったわけではない

ただ、やってみた

手までかざして、強く念じた

ふざけて、だよ?

氏ね。死ねじゃなくて、氏ねって言ってるだろ?

実験さ

するとどうだろう

蟻は



動いている



ほっとしたような、残念のような

ま、殺人鬼にはならなくてすみそうだね。



黒い物体は、僕から遠ざかっていき、芝生の緑と同化した
.


24 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/16(月) 18:19:39



子供達は楽しそうだよ

親御さんたちもね

僕は公園を出た



この世界は僕の物

この大空も……

なんて上を見つめて歩いていた

衝撃。

肩に誰かの肩がぶつかっていた

(,,^Д^)「すみま──



『気にするな──怒る気を奪え、違和感を奪え』



相手の男はそのまま去っていった
.


25 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/16(月) 18:20:15

謝りたくなかった

別に謝る必要もないだろう

だからやった

僕は少しほくそ笑んで、下品な笑い声を少し漏らして

進んだ

ああ、madってこんな感じかな?



しばらく歩くと、住宅地が見えてきた

皆子供の頃はピンポンダッシュなんてやってたっけ……

僕はバカバカしいと思って、なにより怒られるのが怖くてやらなかったけど



やろうかな

18になってピンポンダッシュ……バカバカしいね

だが、それが良い

僕の指はインターホンを押していた
.


26 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/16(月) 18:20:48

「はい?」

(,,^Д^)「あ、すみません押し間違えました」

「……は?」

呆気にとられている

まあまあかな

住民は不思議そうな顔をして「そうでしたか」と言ってインターホンを切った

こんなピンポンダッシュじゃ子供のやるのと同じかな……

新ジャンル「逃げずにいいわけをする」は大して新しくもないかもしれないし……

まだまだ低レベルか……

もっとハイクオリティに……どうする?



うん、くだらないね

僕は飽きやすい

同時に、僕は情けない

何より、アホだ

救いようがないぜよ
.


27 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/16(月) 18:21:48



僕は家に帰る途中、この力について考えた

あの、荒巻はなんだったんだろう

能力者に対してはこの力は使えない……どういうことだ?

他にも能力者はいるって事なのか?

荒巻の目的は?

僕は探偵じゃない。

荒巻については、あっちから来てくれないと話が進まない

僕は貰った力を活用するだけだ

今の使い方が活用と言えるのか?

言えないだろうな。

ま、

それを決めるのは僕だろ?

それでも活用とは言えないことぐらい分かっているさ

面白いね、人間の考えることってさ

なに? この自己矛盾



─────────────────
   上の中   くだらないこと   終
─────────────────


28 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/17(火) 18:56:55
───────────
   上の下   憎悪
───────────



僕は家に帰りついた

宿題しなきゃいけないけど、別にいいや

おやすみ

敷きっぱなしの布団に、僕は体を埋める





宿題やってねえ……

まあいいや

その通り、僕はこの力を使って宿題をサボっても怒られないようにしようというのだ

あったまいーねー、~ボ○ギ○ール~♪



なにやってんだろ……

アホらしすぎて、シュールすぎて

何とも言えない
.


29 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/17(火) 18:57:31

いろいろと、頭が腐りそうなので、何も考えずに学校へ行くことにした



学校

何も考えて無くても足は勝手に到達している

DQN「…………」

煙草吸ってやがる

いつもクラスで騒いでるDQNじゃねえか……

いつもうぜぇんだよな……親御さんに代わってお仕置きしてやらにゃならんな……

(,,^Д^)「おはよう」

DQN「? よ、タカラ──

微妙な音。

僕は全力でDQNを一発殴った



『今のことを忘れろ──記憶を奪え』



DQN「?

    …………

    痛トエエエエエエエエエエエエイ!!!!」
.


30 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/17(火) 18:58:22

(,,^Д^)「大丈夫? どうかしたの?」

白を切る。生憎誰も見ていない

DQN「いてちえてちえいちいえてちえてねtねんてn──え? 何?──痛くて──いたいちあいた」

何を言ってるんだ

僕の所為だけどね

DQN「ああ゛ーーーだめだーーーもう帰るううーーー」

DQNは変な呻き声を上げながら校舎に入っていった

あーあ、ホントに家に帰ればよかったのに



意地悪な笑い

落ちた煙草

全部踏みつけて僕は教室に入った



(#゚;;-゚)「…………」

でぃさんはもう教室にいた

遅刻寸前で入ってくるような(僕は定刻10分前で入るのだが、)人じゃないからな……

(,,^Д^)「おはよう」

(#゚;;-゚)「あ、おはよう……」
.


31 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/17(火) 18:59:05

今日の僕は調子に乗っている

本当はドキドキしたけど勇気を出して声を掛けてみた

チキンな僕が良くやった

ま、この力があって自信がついただけだけどね。

でぃさんは優しいし、絶対に挨拶したら返してくれるって信じてたし──

そう、全部でぃさんのおかげだ

僕自身には何も力が無い。

あの力があるから、嫌われないだろう……とか、なんとか言ったって……

でぃさんがあんなにもいい人だったからできたわけで……

ま、どうでもいいか

だんだんでぃさんに近づけるんだったら……なんでもいいよ……

授業が始まる



宿題やってなかった
.


32 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/17(火) 18:59:50

そんなこんなで、学校は終わった。

宿題についても、うまくやったし

あの「貸せ貸せ厨」も……借りる気を奪ってやったし……



なんていい気味なんだ

と、嘘をついた

いい気味でも何でもない

もともと学校があること自体面白くないわけで……

でぃさんとも積極的に話すことはなかった

まあ、それは僕の押しが弱いからで……

急激に接近しなくてもいいだろう?

力を手に入れても、僕はヘタレだ。

僕は帰り道をそそくさと歩いた



……あいつは……大丈夫か?

僕の眼に映ったのは今朝のDQN。

何の心配しているかって?

記憶を完全に奪えたかどうかだよ

誰がDQNの心配なんかしてやるか
.


33 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/17(火) 19:00:32

(,,^Д^)「なあ、今朝は大丈夫だったかい?」

DQN「あ、……ああ……あれぐらい……にしてもなんだったんだろうな……」

よしよし、上出来だ

(,,^Д^)「まあ、元気そうで何よりだ。じゃあね」

DQNからは完全に殴られた事実の記憶が消えていた

じゃあ、この力のルールはどうなっているんだ?

確か持続的に奪い続ける場合は……意識を対象から放せば消えるんだよな……

じゃあ、記憶は「持続的に奪うもの」と言うよりかは「永久に奪えるもの」というわけか……



僕は実験を帰り道で実験をいくらかやった

『歩く力を奪え……永久に!』

効かないだろうことは分かっていた。もし、効いていたら…………ま、どうでもいいか

そこらの人間にいろいろ術を掛けてやった

『目的地までの道の記憶を奪え』

この命令は効いた。しかし、迷った素振りは数分後に消えた。
.


34 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/17(火) 19:01:10

その実験で分かったこと。

本来ある力(歩く力など)を永久に奪うことは出来ない

そもそも、奪うのは「意思・意識・感情・感覚」だ

だから、そういう系統のものを永久に無くさせることはできない

注意力なんかもそうだ。本来あるような意識

つまり本能を奪い続けるには、対象にずっと集中してなければならない。

ただし、記憶やその類は、完全に消し去ることが出来る。

習慣や、アイデンティティ、抱負に基づくような、長期記憶でない限り。

つまり、DQNを殴ったことのように、突然起きた出来事なんかは忘れさせることができるわけだ。



僕は帰り道、そんな実験をしていた。

なるべく人通りの少ないところを狙って、やったから怪しまれはしなかったとは思うが

見られていたら変態に思われたかもしれない。

同じ道を行ったり来たり

そうやって得た知識を、家に帰ってからメモ帳に書き込んだ。

誰もいない家に帰ってから、ね。
.


35 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/17(火) 19:01:44



僕は外を見ていた

帰ってきた頃にはもう赤かった

すっかり暗くなった外を

ネオンサインが夜の闇に艶を出している

外は暗く、家の中は明るい

窓に、自分の顔が写る

(,,^Д^)

ああ、いつもの僕の顔だ

笑っているよ

何に対して笑ってんだろうね

愛想笑いさ

誰に対してって?

さあ? 知らないね。

憎たらしい笑顔だな、

恐い顔ができないんだよ

なんでかは知らないけど
.


36 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/17(火) 19:02:27

大して喜びも無いんだ

嬉しくもないんだ。

あるのはこの力と

愛想笑いの顔だけ。

面倒は嫌だし

友達もいないし、欲しくないし

どうでもいいし

もう

分からないよ

分からなくてもいいよ

この力がある限り

僕は生き延びれるんだ

だから、

社会に媚びることもない



僕は夜の繁華街に繰り出した
.


37 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/17(火) 19:03:02



さあ、

どこかな、

こんな夜にお外で過ぎるおイタをしている子供達は

お兄さんがね

捕まえて

ぼこぼこにしてやんよ

今までやらなかったことを

僕はやる

自分の望むままに

それが唯一

それだけ

確かに僕がするのは

それだけ

文学ではこんな考え方のこと

耽美主義って言うんだっけ?

ま、

それさえもどうでもいいよ

既にその範囲からも出ているのかも
.


38 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/17(火) 19:03:38

だってさ、



「あ? 何だお前」



「いや、別に? 

    ぶつかっただけだけどね。文句があるならぶち殺すよ?」



耽美派ってのは美を追求するんでしょ?



「んだあぁとおぉぉ?!」



『力をこめようとする意識を奪え』



こんな奴らをさ、相手にして



「?1」



「どうしたの?

          殴らないの?

                     ぶち殺されちゃうよ? 三人とも

                                 それでもいいの?」



「?! …………ぐげええぇぇぇ」



殴ったってどこが美しいの?
.


39 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/17(火) 19:04:06



財布も少し抜いておいた

僕の人相の記憶と一緒に

別に金が欲しかったわけじゃない

さあ、

僕のものだよ

どう使おうか?

そうだ、

コンビニの募金箱に入れよう

皆、

僕のこと偉いと思うかい?

まあ、その意見は人それぞれだろう

僕は、ただ単に思いついただけなのさ

僕に正義感は無いよ

難民を救おう?

知るか、知ったこっちゃ無いね
.


40 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/17(火) 19:04:49

こんなふうに、僕は自分が神様になった気でいるんだ

僕のやっていることが、正しいと思うかい?

正しくないだろう、なんて言わないよ

だってそれを決めるのは僕を見てる、あんたたちだもんね

ヒーローって言われている人達って、こんな感じかもしれないよ?

他人を、ヒーローって決めるのは

他人の価値を決めるのは

そう

あんたたちだ



僕は誰もいない空間に向かって指を差してみた

いい気味だ

僕は下品な笑い顔に湛えながら


.


41 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/17(火) 19:05:25

電子音

暖かい……いや、生ぬるい空気が押し寄せてくる

コンビニ

電子音

外の冷たい空気が押し寄せる

募金箱に突っ込まれた財布

大きく口を開けた店員

目に映っているのは僕の後ろ姿だろう



大して面白くないや

損した気分だね



と、思っていたのだが、そうでもないようだ

思いがけない人物に出会った

正確には見かけた、だけどね
.


42 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/17(火) 19:06:05

でぃさん……

(#゚;;-゚)

どうしてこんなところに?

あれが私服だろうか

ま、普通の服だ。僕の好きな感じ

あんな下品なミニスカートとかではない



でぃさんは、いつの間にか僕の視界から消えていた

どうしてこんなところに?

気にはなる……が

騒音

ネオン

人いきれ

こんな空間で、でぃさんを探すには、距離が遠すぎた

諦めて、家に帰ろう
.


43 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/17(火) 19:06:40

明日、学校でそのことを訊こうかな

やめとこうかな

どうしようかな



僕は

とんでもないことに気がついた

あはははははははははは

何考えてんだろ

もう、

いやだな

僕は

ああ

アホだ

いい加減にしてくれ

この力を使えば



でぃさんをどうにでもできるじゃないか



きやー! やめてー!

このけだものー!

自分に向かってそう呟く

もう、本当に死のうかな



──────────────
   上の下   憎悪   終
──────────────


44 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/18(水) 19:29:57
────────────────
   中の上   希望の無いもの
────────────────



<ヽ`∀´>「…………これは」

俺の目の前に現れた惨劇

柄の悪そうな男達がマケボノのように横たわっている

川 ゚ -゚)「…………仕方ない、な……」

<ヽ`∀´>「……何言ってるんですか……」

俺の上司、クー

冷酷、極まりない

正義感の欠片も無い

ただ、犯罪者を摘発するだけ

その素直で残酷な人格から

付けられたあだ名

「素直クルール」



クー曰く、あのサルとワニを思い出したら殺すとのことだ

「CRUEL」は「残酷・冷酷な」の意味

決してキャプテンやバロンなどではない
.


45 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/18(水) 19:30:57

それにしても……

「……」

やっぱり警察を見てビビッている辺り、どう見ても裏の人間ですってか

<ヽ`∀´>「おい、一体何があった?」

「……それが……ボコボコにされました……」

<ヽ`∀´>「……見りゃ分かる。誰にやられた?」

「……それが……よく分からなくて……」

川 ゚ -゚)「お前らは何をやっていたんだ?」

「……それが……

川#゚ -゚)「それがそれがそれが……ってうるせえなあ!!」

<;`∀´>「ちょ……」

まさにクルール

あっちのクルールだってこんなに冷酷じゃないような気がする

<ヽ`∀´>「……で、何をやっていた──

「申し訳ありません! 麻薬の密売やってました! 勘弁してちょ?」

<ヽ`∀´>

勘弁して、ちょ?

<#`∀´>「勘弁するわけないだろう……クーさん? やっちゃってください」

残念、俺も結構クルールだ
.


46 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/18(水) 19:31:42

俺達は容赦なく奴らに手錠をかけた。

パトカーは被害者兼容疑者を乗せ

内臓に損傷が無いかどうかなどを調べるため、病院へ走った



<ヽ`∀´>「……それにしても、本当に覚えてないのか?」

「ええ…………」

奴らの体は大丈夫だったようだ。だが、犯人の顔の記憶が無いという。

<ヽ`∀´>「頭打ったか?」

「……いえ、そういうんじゃなくて……記憶はあるんですけど

  なんていうかな……顔の部分だけ塗りつぶされているんですよ……」

<ヽ`∀´>「……ん……そうか……そんなこともあるのだろうか。そんなケース初めて聞いたけどな。」

川 ゚ -゚)「嘘を言ったらぶち頃すぞ」

クーさん、いい加減にしてください。

「ぶち頃……ぶ、ぶぶぶ、ぶち殺さないでええ」

なんで「ぶち殺す」に脅えてんだ?
.


47 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/18(水) 19:32:42



俺らは、とにかくこいつらを襲った人間を見つけるため、聞き込みを開始した

で、

結果だ。

なんでも、確かにその喧嘩をチラッと見た人間はいくらかいるようだった。

しかし顔は見てないという。

場所が路地、ネオンの光は届かない

この街には正義も何も無い

誰も警察に通報しないし、そんな喧嘩は日常茶飯事だ

川 ゚ -゚)「ニダー、もうやめにしないか?」

Σ<;`∀´>「な、何言ってんですか……!」

川 ゚ -゚)「この街は警察を必要としていないんだ。

      どうせ犯人が見つからなかったらお蔵入り。

       それに、今は奴らから搾り出してデカイ組織を叩いたほうが給料うpだ」

<;`∀´>「…………本当にクルールだな……」

この街で起こる大半は軽犯罪。重犯はめったにない。

警察は仕事柄、全ての犯罪を摘発しなければならない。だが、重大犯罪を捕まえたほうが早く給料うp。

この街に、光は届かない
.


48 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/18(水) 19:33:44

だが、そんな街を毛嫌いしているわけじゃないことも事実

俺もだんだんと仕事が事務化していっている

このままじゃ、隣にいる女と並んで「ダブルクルール」の称号を与えられるのも

そう遠くない未来になりそうだ。



<ヽ`∀´>「じゃ、お前らの取り調べに移るとするか」

取調室。

「…………あの……」

川 ゚ -゚)「なんだ? 親組織はどこだ? 素直に話せば司法取引だってウハウハだぞ?」

<;`∀´>「クーさん! いい加減にしてください」

<ヽ`∀´>「で、何が言いたかったんだ?」



「…………財布も盗まれていたみたいなんですけど……?」



川 ゚ -゚)「嘘だな」

Σ<;`∀´>「ちょwwwwwwwwwまだ判断できないでしょ……」

正直、俺も「嘘だな」と思ったんだが。



──────────────────
   中の上   希望の無いもの   終
──────────────────


49 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/19(木) 16:50:48
─────────────
   中の中   綺麗な瞳
─────────────





起きる

学校に行く

いつの間にか学校に着く

教室に入る

でぃさんがいる

(;^Д^)「でぃさん?」

(#゚;;-゚)「……何?」

『断る気を奪え』

(;^Д^)「昼休みにちょっと……話があるんだけど……そうだな……屋上に来てくれないか?」

でぃさんは、何か微妙な顔をした

(,,^Д^)「どうしたの?」

Σ(#゚;;-゚)「え? いや……今何か言った?」

いきなりすぎて駄目だったかな……

僕はもう一度説明した。

(#゚;;-゚)「…………うん……いいよ……でも、話って?」

(;^Д^)「いや、……屋上で話したいんだ……」

(#゚;;-゚)「……分かった」

自分の席に着く

よかった

約束は取りつけられた……
.


50 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/19(木) 16:51:28

本当に情けない

力を使ったんだ

自分に自信がないから

僕は勇気を出す必要もなかった

実際にはチキンだから

力を使っても勇気は要ったけど

ああ

情けないよ

僕は最低な奴だ

そんな感覚を払拭するために

僕はやっぱりこの力を使う

悪循環?

さあね

それ……は!

僕が決めるんだよ……!





少し涙が出た

誰にも見られてないだろうな?

でも、もう出なくなった
.


51 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/19(木) 16:52:05



一生出ないかもしれないな

もう、

金輪際流したくなんか

ないよ





時間はあっと言う間に過ぎる

昼休み

屋上

(#゚;;-゚)「話って?」

「ああ……その……」

『断る気を奪え』

『疑問に思う気持ちを奪え』

「……うちに遊びに来ないかい?……暇だったら……」

(#゚;;-゚)「…………うん……いいけど…………それにしても突然ね……

     私とそんなに仲良くもないのに……まあ、別にいいけどね……」
.


52 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/19(木) 16:52:59

念じ方が甘かったかな……でも……

「あ、ありがとう……じゃあ、また放課後な、案内するからさ……」

うまく行ったからよしとする

僕、どんな顔してたのかな



最低だ?

僕はそれでも構わないよ

でぃさんはこんな僕のことを嫌いになるだろうな

知るはずもないだろうけど

でぃさんが怒るんなら仕方ないよ

甘んじて受けるか

怒らせないけどさ

もし、怒るんなら、ね

僕は死んだも同然だし

そのときは世界の終わりが来たって思うからさ



放課後が来た
.


53 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/19(木) 16:54:53

「じゃ、行こうか」

「うん……」

でぃさんの顔を直視できない。

とにかく、他人の眼をごまかしごまかし、でぃさんと学校を出た

『違和感を奪え』

『違和感を奪え』

『違和感を奪え』

この世から違和感を全て取り除くかのように

一応、僕にはまだ人生があるんだ

無いに等しいけど

こんな状態になっても

僕はまだまだ生きたがっている

惨めな奴だ

死ねるものなら死にたいよね

そんな勇気無いからさ

僕には。
.


54 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/19(木) 16:55:39

僕は何をしたいんだろう

でぃさんに、何を求めているんだろう

僕は、

結局でぃさんをそんなふうな目でしか見ていなかったのだろうか

いや

違う

違うはずだ

なんでだろうね

自分のやろうとしていることが

絶対的に見て悪だって分かっている

でも、誰かが止めてくれないと、止まらない気がする

僕には、止める勇気すらないのかな?

僕の顔、今どんな感じなんだろう

どんな眼で見られているんだろう

「でぃさん……?」

「何?」

「……帰ってもいいんだよ?」

『帰る気を奪え』

「……大丈夫だよ……私、タカラ君の家、行ってみたかったから」
.


55 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/19(木) 16:56:26

「……本当に言ってるの?」

本当なのか?

帰る気は奪ったけど……行ってみたかったっていうのは……

18の男女がそんな会話したら……

社交辞令か?

でぃさんは優しいから……

そんなこと……



あれ?

僕は何を考えていたのかな?

自分の記憶を奪ったつもりは無かったんだけど……

混乱してるんだな……僕は……

おかしいから

「でぃさん?」

「何?」

「…………いや、なんでもないんだ……」

僕は、でぃさんを直視できない。
.


56 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/19(木) 16:57:09

何でも見透かしてそうなんだ

その眼が

その、綺麗で、優しそうな眼が

僕の汚い心を全て見透かしてそうで

少し恐いんだ



空を見ると

嫌な感じの

オレンジ色の16時

嫌だ

嫌だ

何で?

何でかな



僕の家に到着した

それまで、でぃさんとの会話は無かった



────────────────
   中の中   綺麗な瞳   終
────────────────


57 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/20(金) 16:45:06
───────────────────
   中の下   黄金時代は、もう来ない
───────────────────



誰もいない



赤い光に焼かれている

僕は玄関を開ける

「ここが僕のうちだよ……」

「……おじゃまします……」

礼儀正しいね

そんなでぃさんが好きなんだ

僕は

似ても似つかないよね

なんで今頃こんなこと言ってんだろ

心臓が

爆発しそうだ

玄関を閉める

密室だよ

鍵は掛けてないけどさ

親も、帰ってくるはずはないんだ

両親とも出張中のはずだから

誰とも関わってないからさ、うちは

だからこの世界には君と僕だけさ

だから何? って言われたら

すぐにでぃさんを帰そう
.


58 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/20(金) 16:46:03

「でぃさん?」

「なに?」

「……少し話でもしないか?」

「何の話?」

でぃさんの顔を直視できない

自分の顔も鏡で見れない

恐いよ

いろんな意味で

自分が恐い

「えーとね……なんだろ……」

自分の話題の無さも恐いね

「……そういえば……子供の頃はね、にんた○ら○たろうなんか見てたのにさ、

  最近は全然見ないね、N○Kの……放送」

苦し紛れ、困ったときのN○K。

「…………そうね……私も昔は見てたわ……」

「……もう……変わってしまったんだね……」

どうしてこんなに心が痛いんだろうか
.


59 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/20(金) 16:46:56

「……いろいろと……懐かしいな…………子供時代ってさ……

  黄金期じゃないかい? 人生の中でも……」

「……そうね……おばさんみたいな発言になっちゃうけど……その通りね……

  でも、……大半は悪い思い出……」

「……え?……」

僕は致命的なミスを犯した

でぃさんは、母親に虐待されてたんだった

「あ!!…………ごめん…………」

「……いいのよ、気にしないで……確かにいい思い出だけ思い出せば……黄金時代よ」

「…………僕も……あんまり子供時代にいい思い出なんて無いんだ……でぃさんほどじゃないけど

  僕にも友達なんていなかった……いつもこんな……って今の顔はどんなふうになっているのか、

  分からないけど……笑顔だった……だけど……心の底から笑顔だったことなんて……本当に少ない……」

「……そう」

赤く、染まった部屋

僕らを焼く



寂しそうな顔だった気がする

愛おしい

心臓が、変な音を立てた
.


60 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/20(金) 16:47:31



発情

かな

立ち上がって

カーテンに手を掛ける

「何してるの?」

でぃさんも立ち上がる。

閉める

「いや、……光が眩しいからね……」

心臓が破裂するよ



『立つ力を奪え』



「あれ……?」

でぃさんが崩れ落ちる

「……危ない!」

倒れそうになったでぃさんを支える
.


61 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/20(金) 16:48:19



『抵抗する力を奪え』

『意識を少し奪え』



「大丈夫かい?」

ゆっくり座り、自分の膝の上に寝かせるように抱きかかえる

顔が近い

「……ちょ、ちょっと……どうなってるの?……」

「……………………」

でぃさんの、その難しい表情を見て思う

この、自分の腕の中にいる状態を見て思う



ここで『理性を破壊し』たらどうなるだろう



僕は襲われるか殺されるかだな

まあ、後者は無いだろう。殺人願望が無い限り

合法的に、でぃさんと……そういうことができるんだ

被害者ぶれるんだ

ここまで来て僕はチキンか。

面白いね

もう、でぃさんは僕の腕の中にいるんだぞ
.


62 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/20(金) 16:48:51

「でぃさん…………」

「……な……に……?」

『嫌がるな──嫌がる気持ちを奪え』

少し意識も朦朧としてきているんだな……

「その……」

言いながら

めちゃくちゃ顔が近い

唇を近づけてみる





抵抗してくれないか?

お願いだから、嫌な素振りを見せてよ

抵抗する力を奪っておきながらそう思う

抵抗したら、一気にかぶりついてやろう

なぜか本末転倒

なんで抵抗したら、なんだよ……





結局無理だったんだ
.


63 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/20(金) 16:49:50

無理だ

僕には

でも、

何かしなきゃ

しなくてもいいんだけど……

そうだ



胸を触ろう

僕はバカだ。

胸なら犯罪にならないとでも思っているんだ

でぃさんの胸を見て考える

考えるなんてたいそうなものじゃない

感じる……そんな欲望の塊の脳みその中と同じ

その感覚に理性なんて無い。

その胸の膨らみ……いい感じのものだ

いわゆる美乳というやつだ

……本当にバカだ……どこのオヤジだよ……

こんなに死にたいと思ったのは

初めてかもしれないな
.


64 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/20(金) 16:51:25

やけだ。

どうするべきか、もう、分からない

僕はでぃさんに抱きつく

服の上から温もりが伝わってくる

ああ……でぃさんの体って…………こんなに温かかったんだな……

36度とは思えない

呼吸が荒くなる

体が震える

心臓が痛い



少しだけ体を離して

右手が、でぃさんの左の膨らみを包む

優しく……ゆっくり……





あれ?

なに?

今の





嬌声?



でぃさんの口から出たの?



いや、もう

なによ

なんなんだよ

そんな声出すなんて思ってなかった

僕はでぃさんから飛び退いていた

チキンだから
.


65 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/20(金) 16:52:41

なあ、でぃさん

なんだいその挑発的な声は

そして、そのいやらしい顔

僕を誘っているのかい?

……そうか

そっちがその気なら

その誘いには



絶対に乗らないよ



チキンの言い訳さ

ごめんね

でぃさん

わざわざこんなところまで来させてさ

謝るべき点はそこじゃないよね

僕のこと、好きかも嫌いかも分からないのに

こんなことして

本当にごめん

目が覚めたよ

ありがとうね
.


66 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/20(金) 16:53:27



『記憶を奪え──さっきの記憶を奪え』

『眠れ──意識を奪え』



でぃさんは、眠った

本当にごめんね

金輪際流さない

鬼になってやる

そう決めてたのに

涙は無情に流れてくれる

僕はまだ人間なんだ

信じられないけど。

僕はでぃさんに使っていない毛布を押入れから出して、掛ける

僕も疲れたよ

少しだけ眠りたいな

でも眠れないや

君の寝顔は素敵だから

本当にありがとうね

こんな僕でも、君は美しい寝顔を見せてくれるんだ。



──────────────────────
   中の下   黄金時代は、もう来ない   終
──────────────────────


67 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/21(土) 14:44:53
───────────
   下の上   飾り
───────────



(# ;;- )「ん……?」

外は真っ暗

カーテン

部屋は蛍光灯が明るい

(,,^Д^)「起きたかい?」

(#゚;;-゚)「……あれ? どうしたの……? どうなって……?」

嘘情報を畳み掛ける

(;^Д^)「いやね、君が……えーと子供時代の話をしていたら……その……

      カーテンが眩しくって光を閉めた……じゃなかった……その……

       突然気を失ったんだよ…………大丈夫? 気分は悪くない?」

(#゚;;-゚)「うん……気分は悪くない……ごめんね……急に気絶なんかしちゃって……」

(;^Д^)「いや、いいって、仕方ないし……君が謝るべきじゃない……」

そう。謝るべきは僕だ

謝ることさえできなかったが
.


68 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/21(土) 14:45:39

Σ(#゚;;-゚)「……あ、もうこんな時間……帰らなきゃ……」

でぃさんは19時になった時計を見てそう言った

(,,^Д^)「あ、それなら送るよ」

とっさに出る言葉

(#゚;;-゚)「本当?……ありがとう……」

自然な会話だな

僕が望んでいたのは

これ

まさに

これだったんだ

自分に腹が立って泣きそうになった

が、なんとか堪えて笑顔を作る

でぃさんは

(,,^Д^)

僕のこんな顔

好きなのかな?

笑顔が嫌いな人なんていないよね
.


69 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/21(土) 14:46:42



夜道

僕らはでぃさんの家に向かった

(#゚;;-゚)「タカラ君」

(,,^Д^)「何?」

(#゚;;-゚)「今日はありがとうね」

(;^Д^)「……え? なんで……」

礼を言われるような覚えは無いよ。でぃさん。

(#゚;;-゚)「子供時代のこと……皆知ってるだけで、分かってくれようとしなかった……

    誰も同情だってしてくれなかった…………からかう奴だっていたのに……

    タカラ君は自分の昔のことにも言及して、私としっかり話をしてくれた……」

(;^Д^)「……そう?……ありがとう……」

……でもさ

(; Д )「……でもさ、そんなこと言われると……恥ずかしいな……

       僕はそんな、たいそうな人間じゃないさ…………どっちかっていうと……駄目な男だよ……」

本心。

(#゚;;-゚)「………………」
.


70 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/21(土) 14:47:31

(#゚;;-゚)「それでもいいよ」



「だって、

  他人の評価なんて

  他人が決めることでしょ?」



(#゚;;-゚)「…………タカラ君のおかげで助かったと思ってるから、それでいいの」

(,,^Д^)「…………本当にありがとうね……そんなこと言ってくれる人……初めてだよ……」

僕と同じ様な考えを

しかも励ましの言葉に使うなんて

嬉しい

でぃさんは、どこまでも優しい人なんだ

僕は優しくない

不釣り合い

それでも、でぃさんと一緒にいたい



それから何分歩いたろうか

(#゚;;-゚)「ここら辺で大丈夫」

(,,^Д^)「本当に? いいの?」

(#゚;;-゚)「……うん……ほら、ここら辺も物騒なんだから、タカラ君も早く帰らないと危ないよ?」

(,,^Д^)「……ん、そうだね……」
.


71 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/21(土) 14:48:22



(#^;;-^)



「じゃあね、タカラ君」



「……うん、じゃあまた明日」



僕の顔、どうだったんだろう

でぃさんの顔は

とびっきりの笑顔だったよ



君は



本当に罪作りな人だ



僕にはその笑顔は重いよ

美しすぎてさ

支えきれないよ

だからさ

また、八つ当たりをしに行きたくなるじゃないか



ここまで来て、責任転嫁だよ

よりによって、君にだよ

こんな僕で、ごめんね

こんな僕でも、良かったら

これからも、少しでいい。

一緒にいてよね
.


72 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/21(土) 14:49:11



僕は変な奴だな

「ぐ…………ぐげえ……」

『抵抗する力を奪え』

でぃさんに、普通に好かれるようになりたいと思っているのに

『判断力を奪え』

「……がはっ……」

こんなところへ来てる

殴る

拳が痛くなる

もう戻れないのかな

誰か捕まえて

叱ってくれないか?

助けて

でぃさん……



そこら辺の悪ガキ……僕も10位ぐらいにランクインできるかな……

そいつらを殴って

意味も無く財布を抜き取る

そんなことを繰り返す日が、何日か続いた
.


73 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/21(土) 14:49:55

でも、

こんな行動で

僕は自分を「正義のヒーロー」だと慰めている

この前まで要らなかった

むしろ嫌っていた

肩書きが

欲しくなる。

現金な奴だ

こんなことをしても僕のことを、でぃさんが好いてくれるわけがない

それなのに、やめられない

なんで

僕は

動いてるんだ?

でぃさんだって言ってたろ?

全ては他人が決めるんだって

でぃさんに好かれたかったら

でぃさんに好かれるように行動すればいいって

分かってるだろ?
.


74 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/21(土) 14:50:39



学校での生活も

あまり楽しいものになった気はしなかった

でぃさんと、少し話す機会が増えただけ

もともとは0回だったのが、1,2回に

恐かった

でぃさんはどう思っているんだろう

それが恐かった

だから僕は

他人と関わるのは嫌だった

それがでぃさんであっても

恐かった

あの日から

でぃさんにあの力を使うことを止める勇気だけは持てるようになった

でも、

やっぱりチキンは簡単には変わらない
.


75 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/21(土) 14:51:36

力の無駄遣いも止めるようになった

信号無視の制止

あれは続けたほうが良かったのかもしれないが、やめた。

そういうことを考えるからには……僕には一応、まだ公益性とか、公共の福祉とか

そういう概念が残っているらしいけど……ね。

おかしいよね

八つ当たりで暴力を振るうのには

使えるのにさ



もう、自分が何者か

分からないよ

警察にも、捕まっちゃおうかな

それでも僕の体は

勝手に西の方向へ向かうんだ



ほら、

警察が来たぞ

ってね
.


76 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/21(土) 14:52:37



川 ゚ -゚)「……なんだ……またか」

マケボノ10人。

<ヽ`∀´>「……どうします?」

川 ゚ -゚)「まあ、……救急車の手配だけして様子を見るか? 聞きたいこともあるし……」

<ヽ`∀´>「……さすが素直クルール」

川 ゚ -゚)「あんまりそのあだ名で呼んでほしくないんだが」

<ヽ`∀´>「分かりまし……た」

最近こんな事件ばかりだ

財布を抜き取られて、フルボッコにされている。

警察署にも重要にも思われてない事件

だが、ただのガキの喧嘩じゃない

全ての被害者が、犯人の顔を覚えてない



そして、事情聴取

そして出てくるのは、被害者となった犯罪者の姿

デカイ事件に関わっている可能性があるので、俺達は虱潰しに被害者を搾り上げる

まったく、なんのための警察か。

困っている人のために働く、はずだ。

困っている人なんて、どこにいるんだ。

この満ち足りた社会に。
.


77 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/21(土) 14:53:52

犯罪も既に、「人を困らせるから犯罪」ではなくなってきている

どうしても、「違法な○○」だとかそんなもので検挙するほうが多い

麻薬密売だって、買う奴がいなければ良いだけの話

誰が困っている?

まあ、実際に困る人はいるんだが……

気が狂った奴に愛する人を殺された人はいるわけで……

でも、皆は言うんだ

麻薬だとかに手を出す奴にこう言うんだ

「お前の体がボロボロになるだけだ、やめておけ」って

俺にとってはそんなことはどうでもいい

結局大事なのは自分っていう考えなんだろ?

じゃあ自分を大事にしない奴にはそんな考えは通用しないわけだ。

実際、麻薬に手を出した奴のことなんて、どうでもいい

そうだろ? みんな。

現代の大人たちに問いたい。

さて、クイズです。

クーさんはなんでクルールな警察官になってしまったんでしょう?
.


78 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/21(土) 14:55:19

よくよく考えてみればな……

おかしいんだよ……

クルールなだけの人間が、警察官になるだろうか?

いつの間にか、やりがいの無い仕事になってしまったんだよ。

本当はクーさん、

あんたも、希望を持ってこの世界に入ったんじゃないのか?

俺達はもう大人だ。

いつの間にか、大人に洗脳された

大人だったんだ。



「……ダー? ニダー? どうかしたのか? 大丈夫か?」

Σ<;`∀´>「は、はい!」

川 ゚ -゚)「呼びかけても返事が無いから心配したぞ?」

<ヽ`∀´>「す、すみません……ちょっと考え事してたもんで……」

川 ゚ -゚)「仕方ないな…………ほら、行くぞ!」

<ヽ`∀´>「は、はい!」



そう言うクーさんの後ろ姿に、

希望が僅かに乗っかっていたように見えたのは

大人の作る、ネオンサインのいたずらだったのだろうか



──────────────
   下の上   飾り   終
──────────────


79 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/22(日) 16:34:12
───────────
   下の中   集束
───────────



学校

いつものように

僕はつまらなそうに窓の外を眺めていたんだ

(*゚ー゚)「タカラ君」

(  ,,^)「ん? なに?」

(*゚ー゚)「消しゴム貸してくれない?」

(  ,,^)「……消しゴムね……なんか消しゴムは確率が高いな……」

(*゚ー゚)「いつもごめんね」

(  ,,^)「謝る気なんて……無いだろ? 定型句なら言わなくていいよ、ほら……」

僕は消しゴムを渡す

正直に、

どうしたんだろうか……

(*゚-゚)「…………タカラ君……怒ってるの?」

僕はしぃに向かって言った

(,,^―^)「……怒ってると思うのかい? こんなに笑っているのに。

      僕は気分が良くなっているから、『定型句なら言わなくていい』って言ったんだ……

      少し嫌味たらしかったかい? そうだったら訂正するよ……ごめんね……」

僕は、本当に素直に謝ったんだ。優しく。
.


80 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/22(日) 16:35:53

(*゚-゚)「……いや、その……本当に……どうかしたの?……あの、社交辞令なんかじゃなくて……

     本当に……その、……いつもごめんなさい…………それに、あなたが謝る……べきじゃないわ……」

しぃはそう言って消しゴムを借りずに、去っていった

僕は、本当に悪気は無かった

別に、知能が低下しているわけじゃなかった

その日は、本当に、気分が良かったんだ

ただ、それだけだ

今考えると……まあ嫌味たらしかったかもしれないな……

僕があんな顔したの、恐かったのかな……

でも、

まあ、しぃに『迷惑だ』ってことが的確に伝わったし、よかったか。

別に作意はなかったんだけどな……

しぃは意外にいい奴だったのかもしれないな

でも、嫌いだけどね。

まあ、僕はもっと

正直に生きるべきだったのかな

世間に媚を売らずに

生きてたら、楽しかったかもしれないな……
.


81 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/22(日) 16:36:51



<ヽ`∀´>「……こいつが……確かに財布ごと……」

川 ゚ -゚)「……こいつがやっていたのか?……」

例の暴行事件は進展した。

/ ,' 3 「どうじゃ? 監視カメラの映像から顔は見えんが、役に立つかな?」

コンビニで聞き込みをしたところ、財布ごと募金する奴がいるとのこと。

最初の情報提供元で映像を見ると、その姿が映っていた

川 ゚ -゚)<ヽ`∀´>「捜査協力ありがとうございました」

/ ,' 3 「頑張ってな」

人の良さそうなじいさんだった



俺達はその後、いろんなところを回った。

で、出るわ出るわ、映像が出るわ。

どのカメラにも、顔が映らないように、顔を隠しながら募金に何か突っ込んでいる。

募金箱のあるところならどこへでもって感じだ

川 ゚ -゚)「ニダー……どう思う……?」
.


82 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/22(日) 16:37:46

<ヽ`∀´>「……んー……何とも言えませんね……このご時勢、募金なんて珍しいですね……」

ふざけてはいない。これは事件だが、なんにせよ、募金をするために財布を奪っているのなら

珍しい。

異常、と言うべきか?

川 ゚ -゚)「……そういう問題じゃない……募金の時間帯を考えろ……」

<ヽ`∀´>「……えーと……確か……21時ぐらいでしたか?」

川 ゚ -゚)「21時に暇になる奴って?」

<ヽ`∀´>「……まあいろいろあるでしょうけど……」

川 ゚ -゚)「私が思うにな……あれは学生じゃないかと思うんだ……背格好とか言うのも含めて……」

<ヽ`∀´>「……まあ、確かにそんな感じにも見えましたね……」

川 ゚ -゚)「……私としては……この事件……気にはなるが……募金なら……なあ?」

どうでもいい。ということか?

<ヽ`∀´>「まあ……確かに……いてくれたほうが……世間のためにはなりそうですけどね……」

川 ゚ ー゚)「ふふふ……そうだな……だが、……もっと事件が巨大化したあかつきには……

      捕まえて給料うpと行こうじゃないか……」

<ヽ`∀´>「………………」



本気で言ってるように、見えなかった。

だから

<ヽ`∀´>「そうですね」

と答えておいた。
.


83 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/22(日) 16:39:01



その後、事件の捜査はあまり進展しなかった

事件に執着していたのは、まったく俺だけだったから。

川 ゚ -゚)「ほら見ろ、誰も助けてやらんのだ。もちろん私だって。そんなガキに付き合っていたら

      何も進まんぞ? ほら、全く別の事件にヒントが隠されているかもしれないしな」

<ヽ`∀´>「……本当はどうでもいいんでしょ?」

分かっているんですよ?

川 ゚ -゚)「ああ」

<ヽ`∀´>「素直すぎる」

川 ゚ -゚)「それが私だ」

<ヽ`∀´>「はいはい……」

電話が鳴り響いた。クーさんが受話器を取る。

川 ゚ -゚)「もしもし?……そうか……」

川 ゚ ー゚)「ニダー、何者かがここで暴れてるって話だぞ、お前のお目当てのミスターXかもしれん。行ってこい」

その女は地図を指差してそう言った。

なんだ? その嬉しそうな顔は。

どうみても嘲笑です、本当に…………

俺の眼は、現場の方向を見た。

その憎たらしい笑顔を睨んだ後のことだ。
.


84 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/22(日) 16:40:21



退屈なチャイム

下校時間

西の空から僕を襲う熱球

熱いんだよ

やめてくれよ

そう言っても大量の赤外線は飛びっぱなし

商店街に差し掛かる

少し早めのネオンサイン

LEDもそこらへんに使われている。

実際はネオン以外の気体も使っているが……

そんな堅苦しいことは別にして

綺麗だ



汚い大人たちが作る。

権利闘争が激化したこともある。

冷たく、明るく、綺麗にその輝きを放つ最近のライト達

温かみのある白熱電球はどこに行ったのだろう。

いつしか世界からあの温かみは抹消されていく。

だが、僕はそんな温かみよりも

穢れて、澄んだ、冷たいライトのほうが好きだ。
.


85 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/22(日) 16:41:23



僕は家で蛍光灯を点ける。

もうそろそろ寿命だろうか。綺麗な白色の光じゃない。

ライトの下には、募金しきれなかった財布が横たわっている。

自分のために使うことは無かった。

いや、募金も遊びでやったんだ。もう後には戻れないところまで来ていた。

分かってはいたが、僕の深層心理はどこまでも甘い。



僕の部屋は急に灰色になった。

そこで僕は押入れを漁る。

確かここら辺に予備の奴が…………無い。

買いに行くとするか……

この財布で

うちに金が無い。金を下ろすのもめんどくさい。

どっちにしろ、この金は永久的に僕のだ。

返せと言われたら返せるし、返さないし。

ほんと、ここまで落ちぶれておいてなに言ってんだか。

なあ?

どう思う?

いつものように、誰もいない空間に訊ねる。

今は何故か本当に答えが欲しくなっていた。
.


86 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/22(日) 16:42:19



たまにはこんな日もいい。

今日は拳休め。

好きなときに好きなだけ殴ればいいだろ?

本当はそういう思考で拳休めをしているわけではない。

ただ、



汚れた繁華街、霧でぼんやりとした月、緑色の雲。

そんな夜の街を、

綺麗だって思ったのは久しぶりだったから。

明るいだけの、辛い世界が、今日はそうは見えなかった。

どうしたんだろうね?



こんな世界もいいかなって

何かを諦めたのかもね
.


87 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/22(日) 16:43:14



商店街の路地裏に差し掛かって、

変な騒ぎ声がする……

僕は目の前がおかしくなった





でぃさん?





なんで殴られてるの?





『死ね』

僕はでぃさんを

『死ね!』

殴っている男

『死ね!!』

二人に

『命を奪え!!!』

念じまくった

それと同時に、

ストレートが、一人の顔を貫いていた。
.


88 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/22(日) 16:44:22

(# ;;- )「や、やめて!……タカラ君!……」

Σ「……はっ!」

僕は我に帰った。

今するべきことはこんなことじゃない。

「……あっ、あまり喋らないで…………大丈夫? すぐに病院に……」

横たわったでぃさんを、抱き起こす。

(# ;;- )「だめ……やめて……」

満身創痍とは思えない強がり。

「……ちょ……何言ってるんだ……」

(#゚;;-゚)「いいからここにいて……話したいことがあるの……!」

でぃさんの眼が、強くなった。

「……分かった……聞くから……! でも──

でも、君の体が心配だ。そう言おうとしたとき、

「ひぃ、……ひぃいぃいいいぃい!!」

後で、殴らなかったほうの男が騒ぎ始めた。

「……うるせぇなあ!! 黙れ! 殴られたくなかったら、早く帰れ!!!!」

いままでこんなに怒鳴ったことがあったろうか。

息が上がる。

男は仲間を残して自分だけ逃げ出していった。

そんなもんなんだ。

そんな奴らがでぃさんを殴るなんて悪辣な行為を……
.


89 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/22(日) 16:45:59

(# ;;- )「もう……行ったわね……こんな姿……タカラ君には見られたくなかったな……」

でぃさんのこんなに悲しそうな表情は、今まで見たことが無かった。

「ご、ごめん……でも、なんでこんなところに……?」

(# ;;- )「……タカラ君には教えてあげる……いつかは言わないといけないと思ったし……」



あれ?

何言ってるの?

「タカラ君には」って……

あれ?

どういうこと?



(# ;;- )「私は殴られ屋をやってたの……親も二人ともいなくなっちゃったし……簡単に稼ぐには

     ……この方法しか……無くてね……あの人たちはれっきとしたお客さん……」

「ちょ……!……殴られ屋って……!!」

自分の愛する人が、そんなことをやっていたら自然な反応だろう

(# ;;- )「いいから最後まで聞いて……!」

「………………ごめん──

僕がそう言うなり、でぃさんは、僕に抱きついて訴えた。

(# ;;- )「でも……タカラ君には見られたくなかったの……」





「私は、タカラ君のことが好きだったから」



でぃさんは、涙を流して、そう、ハッキリ言った。

僕の腕の中で、そう言った



──────────────
   下の中   集束   終
──────────────


90 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/23(月) 19:29:40
───────────
   下の下   二人
───────────



……今……僕のことを──

「……ゲホッ! ゲホッ……」

僕の服に付く赤色。

「でぃさん? でぃさん?!」

でぃさんは満身創痍だったんだ。それをいつまで忘れてるつもりだったんだ?……僕は……

「大丈夫……」

せめてこれだけ……

『痛みを奪え』

「大丈夫なわけが無いだろう! ほら!……病院に行くぞ──

(;^ω^)「あ、あいつですお! あいつがドクオをぶっ飛ばし……」

あいつ……! 警察呼びやがったか……!

でぃさんを殴り倒しておいて……警察呼べるような身分でもないくせに……!!

<ヽ`∀´>「分かった……今から事情を聞きに行く!」

くそ……

「でぃさん? 掴まって! 走るよ!」

Σ<#`∀´>「ちょ…………待てーー!!」

待つわけないだろう……!



僕は走った

でぃさんを抱きかかえて

走る

走る

振り切れない
.


91 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/23(月) 19:30:39

息が

持たない



僕の左前方向に、車が見えた

こちらに走ってくる

後に警察官



僕の脳みそは、とんでもない計算をする



『注意力を奪え』

車に念じる

警官にも念じる

僕は車の前を全速力で通過する



後で響く、ブレーキ音、衝突音。

警官は、車に撥ねられた

計算通りに





もう、

堕ちるところまで堕ちてしまったんだな

僕は
.


92 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/23(月) 19:31:36



どれぐらい逃げただろうか

どこかの廃ビルだ

灯りは一切無い。

辺りがよく見えない。

月も雲に隠されている。

気がおかしくなりそうなほど澄み切った空気

僕とでぃさんだけの、絶対世界

「ここまで……ハァ……逃げれば……大丈夫……じゃない……

 でぃさん……ァァ……し……死なないで……」

涙が出てきた。

「大丈夫……私は死なないわ……」

まだ痛そうな顔をしてるね。……気休め程度だけど……

『辛さを奪え』

「……何を……ハァ……言っている……んだ」

「今まで隠してて……ごめんね……まだ、隠し事が……あるの……」

月が出てきた

でぃさんが、腕を捲り上げる。

月は、その部分だけ照らして、僕らの顔を照らさない。

痛々しい傷



それが、

見る見るうちに

綺麗な肌に変わっていった
.


93 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/23(月) 19:32:33

「……驚いた……でしょ?」

正確には、綺麗な肌、ではなかった。

もともとある、痛々しい虐待痕は残っていた。

でぃさんは、そして、すぐに僕を抱き締めた。

温かさしか感じない

「……タカラ君なら分かるかな……この力……

 今ね、抱き締めているのは……タカラ君が逃げていかないようにするため……

 タカラ君は……頭が良いから……分かるでしょ?」

「……………………もしかして……荒巻かい……?」

でぃさんは、頷いた。

僕が何か言おうとすると思ったのか、でぃさんは矢継ぎ早に話を続けた。

僕がね、君に敵うと思っているのかい?

僕は全然歯が立たないんだよ。

何も言うつもりは無いし、逃げるつもりも無い。

もう、何か分かっちゃったんだ。直感で。

だから僕はずっとこうしているよ。

「私が、両親が私の世界からいなくなって……途方にくれていたときにね……

 荒巻は目の前に突然現れたの……『力が欲しくないか』って……」
.


94 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/23(月) 19:33:22

「それで……渡されたのが……この絶対再生能力……どんなにケガをしても自分の意思で回復できる

 ただ、その能力を渡されたとき、デフォルトはこの痣だらけの体……後遺症までは治らなかった……

 だから丁度良かった……殴られ屋の仕事は……ケガをしたような痕がしっかりあって……誰も不審には思わない……

 もともと、誰も殴られ屋の心配なんかしないしね……

 ただ、私と同じ、荒巻から能力を受け取ったものに対して、技は効かない。

 能力者から受けた傷は自然治癒とか手術でしか治らない。

 つまり、私を殺せるのは……タカラ君だけ…………まあ、荒巻が他の人にも能力を与えてたら別だけど……」

「そ……それで……」

それで、……別に言うことはない。

ただ、この雰囲気に繋ぎの言葉が欲しかった

僕だけ何も言わないなんて、耐えられなかったから

「……私は……タカラ君のことが好きなの……だから……家に招待してもらったときは本当に嬉しかった……

 タカラ君も……私のこと好きだって……分かったから……」

「でも……それは……!」

僕も、でぃさんも、心臓が爆発しそうになっているみたいだ。

声が、出にくい。
.


95 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/23(月) 19:34:00

「……自分のこと……責めてるんでしょ?」

「……分かるかい?…………情けなくてさ……もう……」

今更言う必要もない。

でぃさんは、僕が能力を使って自分を犯そうとしたことは分かっている。

その上で、僕と接していた。

あのとき、僕が使った力の内容に合わせて行動していた。

荒巻から教えてもらった特殊すぎるルールを、忘れるわけがないだろう。

今は、こんなに近くにいる。

体の距離は、0

「……あのことは……いいの……私が望んだから…………欲望の塊なのは、私のほう……

 ……私の演技……上手かったかな?……タカラ君に胸、触られたとき……大げさな声出したけど……

 本当に……気持ち良かったし……タカラ君になら……最後までされてもいいかなって……

 そうね……ここは屋外だけど……したいなら……してもいいよ?」

……ちょ……ちょっと……

「や、やめてくれ……!」

……なんでそういうこと言うのさ?

今度ばかりは本当にびびったよ?

「……君が…………でぃさんがそういうようなこと……言っちゃ駄目だ……!

 全部僕が悪いし……僕が言えた立場じゃない……!

 けど……でぃさんは綺麗だ……僕みたいに穢れてない……

 身勝手だけど……君には……そんなふうに言ってほしくないんだ!……」

頭が、熱い

溶けそうだ
.


96 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/23(月) 19:34:47

「…………意気地無し!……穢れてない?……殴られ屋やってる時点で、十分穢れてるって言えるわよ!」

僕の胸の中で、怒ったようにでぃさんが言う。

怒ってもいいんだよ? 僕はそうされるべきだから。

でも、君は一切怒ってくれないんだ。

「……あなたは優しいわね…………さっきだってそうだった……痛みを取ってくれようとした……

 生憎、あなたの力の恩恵には与れなかったけど……嬉しかった……」

「……き……君に何が……分かるって言うんだい……」

ああ、分かるだろう。

でぃさん、君なら僕の事を、全て分かるだろう

僕は君には歯が立たないからね。

ただ、でぃさんと同じ口振りで接したかったからそう言ったんだ。

それさえも君は見抜いてるだろう。

「……分かるわ……あなたはいつも優しい……学校でも、しぃさんに何でも貸していたし……

 なにより……家に招待してくれたときだって私と真剣に話をしてくれた」

僕のこと……いつも見てたのはそういうことか……

気づかなかったなんてな……

「……僕が……そんなにいい人間に見えるかい……?……八方美人なだけだよ、僕は……

 僕は力を暴走させてなんでもやったさ……人だって殴ったし、

 ……君じゃなければ……優しさの欠片も分けない男だよ?……僕は君が好きだから、話も真剣に聞いた……

 全部君を犯すための手段だったんだ…………だから……僕は──

「私に嫌われるようなことをわざと言うなんてね……私に嫌われるのが恐くないの……?」
.


97 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/23(月) 19:35:28



月がまた出てきた。

青い光をばら撒く

「……そりゃ、恐い──

「も、もう……何も言わないで……自分から聞いてて変だけど……堂々巡りになっちゃう……」

僕らの頬には涙が伝っていた。



全て分かった。

でぃさんは、僕のことを嫌ってなんかくれないだろう。



「あなたのことは

 私が全部決めるから

 私のことは

 あなたが全部決めて」



(#^;;-^)



あの時にも見た、綺麗で明るくて、僕の一番好きなでぃさんの表情



「私は、嘘を隠し通せなくて、自虐的な、優しいタカラ君が好きで、愛おしい

 今までも、あなたがそうでなかったことなんて無いし。これからも、そうでないことなんて無いわ」


.


98 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/23(月) 19:36:22





僕は、でぃさんの唇を奪った



正確には、奪い合った。かな



月も姿を消した、二人だけの空間で



思う存分



世界一、甘く



世界一、いやらしくなるように



誰にも負けないように





朝が来たとき、

僕らはその場所にはもういなかった



──────────────
   下の下   二人   終
──────────────


99 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/23(月) 19:37:04
────────────────────
   終わり   警察官のエピローグの序章
────────────────────



川 ゚ -゚)「ただいま」

<ヽ`∀´>「あ、お帰りなさいクーさん」

川 ゚ -゚)「まったく……パトロールなんてもんはやりたくないな」

<ヽ`∀´>「まあそう言わないでくださいニダ」

川 ゚ -゚)「そういえば、その口癖、というか方言か……どうして……」

<ヽ`∀´>「今まで封印していたかってことですニダか?」

川 ゚ -゚)「……まあそうだな」

<ヽ`∀´>「……まあ、人には諸事情があるっていうもんなんですよ…………

      あえて言えば……負けていたからかな……」

川 ゚ -゚)「何ニダ?」

<;`∀´>「何に、だ?ってことですよね……カタカナだとびっくりするんですが……」

…………まあ、……大人たちにってことかな……

<ヽ`∀´>「これは自分だけの秘密ってことで……お願いしますニダ」

川 ゚ -゚)「そうか……まあ、あえて聞かないよ」
.


100 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/23(月) 19:37:44



「待ってくれ」

車と大激突

「待ってくれ!」

「待ってくれニダーーー!!!!」

意識が遠のきつつ、彼に放った言葉。

彼には届いてなかったろう

声にもなっていなかっただろうから。





彼に伝えたい

忘れかけた熱意、正義感

正確には、忘れてもいいかな、と思っていた正義感。

俺は取り戻した。

感謝の言葉を口にするわけじゃない

一応、逃亡中の犯人だし

でも、逮捕したいってわけじゃない

逮捕するべきじゃないから
.


101 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/23(月) 19:38:33

俺は車に轢かれた後、病院に搬送され、思ったより早く回復した

逃げた彼の顔、抱えられた女性の顔

端的に覚えている情報から

必死で捜した

辿りついたのが、

タカラという少年と、でぃという少女

ごく普通に見えて、俺には分かった

劣悪な環境にいた二人の18歳。

あの事件の後、二人揃って姿を消したという。



君たちは一体どうしているだろうか

この前、……君たちも知っているだろうな

荒巻と言うおっさんに出会ったんだ



俺は君たちの事を調べて、どうも不可解な点が多かった

俺も、君を追いかけたとき、少し注意力散漫になった覚えがあるからだ。

そして、あの悪魔はやってきた

俺をからかうために。

/ ,' 3 「おやおや、これはこの前の警察さんじゃないかね」

<ヽ`∀´>「……あんたは……コンビニの店員さん……じゃあなかったニダか?」

今はいかにも仙人だ。

/ ,' 3 「そうじゃ。じゃが本当は違うんじゃよ……フォッフォッフォ……」

いけ好かない笑い声
.


102 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/23(月) 19:39:29

<ヽ`∀´>「……何が言いたいんですニダ?」

/ ,' 3 「タカラとでぃには私が超能力を授けたのじゃよ……この、荒巻が……」

<ヽ`∀´>「……え?」

何のことだ?

/ ,' 3 「おぬしの捜査は完璧じゃ、わしも超能力者じゃからな、分かるんじゃよ」

<ヽ`∀´>「…………はあ?……」

よく状況は飲み込めなかったが、とりあえず聞かなければならないことがある

<ヽ`∀´>「じゃあ……なんで……彼らにそんな危険な力を……?」

そして、

/ ,' 3 「なぜって?……それはの……面白そうだったからじゃ」

俺の心に湧いたのは

/ ,' 3 「一種の実験じゃよ……フォッフォッフォッフォッフォ……

     世界に絶望した少年少女、ちょうどいいのが見つかってな、

     そんな二人に生き抜く力を、この世を荒らす力を、与えてみたらどうなるかなー、なんてな」

憎悪。

<#`∀´>「……ふざけるな……」

<#`∀´>「ふざけるな!! 何が実験だ! 二人の人生を狂わせたのは! お前かああああ!!」
.


103 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/23(月) 19:40:19

俺は持っていた警棒を取り出し、荒巻に殴りかかった

が、

荒巻は後ろにいた

/ ,' 3 「フォッフォッフォ……警察官が一般人に暴力を振るっていいのかな?」

お前は一般人じゃない。保証する。

<#`∀´>「てめえ……ぜってえ──

/ ,' 3 「許さんか許すかは別にして、な

     わしの所為で彼らの人生が狂ったと、本気で思うか?」

<#`∀´>「……………………」

俺の心を見抜いてるのだろうか。

/ ,' 3 「……時代の流れじゃないのかね……この世の中を……荒らした大人が悪いんじゃないのかね……

     おぬしだって……いろいろ心に傷を負っているんじゃろ?」

図星。

<ヽ`∀´>「……分かったような口を利くな……」

精一杯の反抗。

/ ,' 3 「……まあいいじゃろ……わしは……二人に生きる力を与えたんじゃ……

     ちなみに、二人がお互いに好きあっているぞ、今も一緒に生活してるんじゃなかろうか?

     まあ、もう死んでるかもしれん。わしも確認しに行けないのでの。

     そのことを知ったときは、初めて不本意ながらいいことをしたのかもしれんと有○になったものじゃの……」
.


104 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/23(月) 19:41:08

<ヽ`∀´>「……何が言いたいニダ?」

/ ,' 3 「別に? 独り言じゃよ」

<ヽ`∀´>「…………一つ皮肉が言いたいんだが……」

/ ,' 3 「なんじゃ?」

<ヽ`∀´>「初めて不本意ながら……ということは、お前は今まで誰かを幸せにしてやったことは無いニダ?」

/ ,' 3 「……どうじゃろーなー?……フォッフォッフォ……

     わしが誰かを幸せにしてやるような義務はないし、また、不幸にする義務も無い。

     わしは、所詮、きっかけを作ることしか出来ない生き物じゃ……

     それがどう働こうと、わしはその光景を見て、楽しむだけじゃよ」

こいつは……

<ヽ`∀´>「希望とか、無いのか?」

なんのために生きてるんだ?

/ ,' 3 「別に? この世界がどうなろうと、知ったこっちゃ無いね

     望むことなんて、一切無いの。

     この世界では、全てが自由じゃ」

/ ,' 3 「ま、わしとおぬしではあらゆる概念について、感覚が違うじゃろうから、分からんじゃろ」

ああ、一切、分からないね
.


105 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/23(月) 19:41:48

だが、

<ヽ`∀´>「……もしかすると」

/ ,' 3 「なんじゃ?」

<ヽ`∀´>「お前も……俺達や、タカラ君達と同類なのかもな」

/ ,' 3 「…………フォッフォッフォ……おぬしらと一緒にされてたまるかい」

うぜえ。

<ヽ`∀´>「……俺だって、お前なんかと一緒になりたかねえニダ……だが、そう思ったんだからしかたねえだろ」

/ ,' 3 「……フォッフォッフォッフォッフォッフォッフォッフォ……」



荒巻は、消えた

笑い声だけ残して

意味不明な

どんな感情によるものか分からない

笑い声だけ残して

荒巻は、消えた



俺も、無性に笑いたくなったのは何でだろうな
.


106 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/23(月) 19:42:38



それにしても、

君たちが逃げてから世界は変わった

最近

腹の立つ事件が減ってきている

正確には、謎の人物がいて、そいつがなんでも全国遠征して嫌な奴らに鉄拳制裁を食らわしまくっているとか

やっぱり財布も抜かれているとか。

更に、事件の起こる前には男女二人組の殴られ屋が近くに現れると言う話だ。

でも、誰も利用している最中の風景は見たことが無いとか。

決して褒められるようなことじゃないな。



変わっているのは大きなまとまりだけじゃない

俺の近くでも変わったことがあった

川 ゚ -゚)「そうそう、パトロール中に調べてきたんだが……ほれ」

掻き集められた、男女二人組の殴られ屋の情報

近くに来ている。

<ヽ`∀´>「クーさん……これ」

川////)「なんだ! 別にお前のためにってわけじゃないぞ! たまたま暇だったからなんだからな!」

クーさんが、素直じゃなくなったし、クルール度も減ってきた
.


107 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/23(月) 19:43:24

川*゚ -゚)「ほ、ほら、早く行ってこないか、タカラ君たちが待っているかもしれんだろ」

待ってる……わけないよな

<ヽ`∀´>「分かりましたニダ」



暗めの夕方

警察全体にも、覇気が宿ってきたように思う

まあ、それは気のせいかもしれないが……

少なくとも、新しく入ってきた後輩は、真面目で元気なんだ。

君たちは知っているだろうか

まだまだ荒れた世界

君らもまだまだ食いつなげる時代

それがだんだん無くなっていることに

君たちは自分の住まいがどんどん狭くなっていってるのに

君たちは気づいているだろうか

俺は、

君たちを悪人だとは

どうも思えない

狙っている狙っていないは関係無しに。
.


108 : ◆y1TBgQ3JzI:2007/04/23(月) 19:44:06

君たちには帰ってきてほしい

君たちは、表の世界で生きるべき人間だ

かなり調べたんだよ?

いろいろ話は聞いてるんだよ

モナーっていう教師と、しぃっていう生徒から

タカラ君もでぃさんも優しいって

それと君らの行動や

おこがましいかもしれないが、独自のプロファイリングの結果から考えて

君たちは、裏にいるべきじゃない。

だから俺は君たちに会わなければならない

君らに伝えたいんだ



無線が入る。俺の新しい後輩のモララーからだ

「ニダー先輩? あの二人らしき人物が現れました! 早く来てください!」



俺の思いの全てを





「ああ、今行く」








      (,,^Д^)は奪って堕ちてゆくようです   終わり


.


[ 2000/03/06 19:21 ] 中篇まとめ | TB(-) | CM(0)

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