ブーンミコ酢 ブーン系過去作まとめ

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('A`)が地図の無い旅をするようです 2後

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/22(火) 23:56:38.87 ID:P55CwnjP0


二旅目 後編

川 ゚ -゚)「飯の時間だぞ、旅人さん」

その一言で目が覚める。
朝からこんな美人に起こされるなんて人生捨てたモンじゃない。

('A`)「んあ…おはよう」

川 ゚ -゚)「おはよう。冷めてしまわぬうちに食べよう」

客間に入るとおいしそうな食事が並んでいる。
昨日の夜もご馳走になったのだが気になることが一つ。

('A`)「この家ってクー一人で住んでるのか?」

川 ゚ -゚)「ああ、今は一人で住んでいる」

クーは笑っていたが、
どこか寂しそうで、まるで昨日聞いた音のように感じられた。

/ ,' 3「飯を食べたら、旅人さんを案内してやったらどうかな?」

荒巻さんがクーにそう言うと、

川 ゚ -゚)「そうだな、この街のいいところをたっぷり教えてやろう」

てなかんじで話が進んでいった。




64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/22(火) 23:57:35.43 ID:P55CwnjP0


クーと街を見て廻ったわけだが、
やはりこの街は凄い。

芸術のことに関しては無知も同然だが、
きっと芸術に長けた人が見ても凄いというに違いない。

この街は沢山の顔を持つ。
時間帯、つまりは日の当たり方によって輝きが変る。

それほどのものをここに住む人は、
当たり前のように制作し、飾り、これを元に生計を立てている。


川 ゚ -゚)「いい街だろう」

('A`)「……ああ」

すっかり硝子細工に見とれていた俺はクーの言葉にすぐに反応できなかった。

('A`)「確かにいい街だ、でもいつかは出て行かなくちゃならない」

川 ゚ -゚)「旅人だものな……」

まただ、またクーは笑顔で寂しさを隠す。
旅人でなにかあるのか……?



66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/22(火) 23:58:34.58 ID:P55CwnjP0


すっかり日も沈み、ひとまずクーの家にもどる。
今晩は宿をとろうと思ったのだが、

川 ゚ -゚)「一人や二人泊まったってかまわんよ」

と言われ、結局滞在中はクーの家に泊まることに。
夕食をご馳走になり、クーと二人客室から庭を眺める。

荒巻さんは自分の家に帰ったようだった。

川 ゚ -゚)「月が綺麗だな」

('A`)「ああ」

なんてロマンチック。
ここで俺がイケメンだったら、あんなことこんなこっといっぱい―――。

川 ゚ -゚)「明日することは決まっているのか?」

どこかで音がする。
あの寂しそうな音。

川 ゚ -゚)「決まってないのなら……、少し話しに付き合ってくれ」

少し長くなるからな、そう言ってクーは話し始めた。



67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/22(火) 23:59:32.03 ID:P55CwnjP0


川 ゚ -゚)「私がこの街から出たことが無いのは……爺さんから聞いたな?」

('A`)「ああ、聞いた」

川 ゚ -゚)「それには本当にくだらないが理由があるんだ」

クーは月を眺めながらゆっくりと、
そしてどこか懐かしそうに話し続ける。



69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/23(水) 00:00:32.02 ID:mH27L2dj0


私がこの家に暮らしているのは単純に、この街に身内が一人もいないからだよ。
それは君も気づいていただろう?

私をこの街に生んでくれた母はとにかく明るくて、綺麗で、
世界中から元気をかき集めたかの様な人だった。

何をするにも大雑把で、それでいて私のことはしっかり気にかけていてくれて、
そんな優しい母のことが大好きだった。

それでな、私の父は……、旅人だったんだよ。
ははっ、そんなに驚くこと無いだろう?

母から聞いた話だとこの街で硝子細工を調べているうちに、
そのままここに住むことにしたらしい。
旅人は本当に自由人だな。

今まで見てきた旅人も自由気ままにしていたよ。
好きなところに行き、好きなときに旅立つ―――、
と、話がそれてしまったな。

すまない、話を戻すか。



70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/23(水) 00:01:51.82 ID:mH27L2dj0


母と父が結婚することにしたのは、
父がこの街に住むことを決めて二年後だったらしい。

それからさらに2年経って、私が生まれた。

私は、好奇心旺盛な子供で、
大人しくしていると思って目を離すと、
物に触れてそれを壊したり、歩きたての頃は一人で街の外に行こうとしたと聞いた。
それで街の外には行かないように気をつけられていた。


私が十歳にもなると外に出てもいいと言われていたんだがな。
なぜかその時は外の世界は怖いものだと思っていて、一歩も出なかったよ。


で、また家族の話になるのだが―――。


川 ゚ -゚)「少し休もうか、のどが渇いてしまった」

クーはそう言って客間を出る。
きっとお茶をとりに行ったのだろう。

案の定彼女はすぐにもどって来た。
二人分のお茶をコップに入れ、俺とクーはそれをのどに流し込む。

十分が経つとクーはまたゆっくりと話す……。



72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/23(水) 00:03:05.96 ID:mH27L2dj0


私の母はこの街の生まれでな。

硝子細工を作るのがこの街で一番うまかったよ。
荒巻の爺さんに弟子入りしていたらしい。
私は毎日飽きもせず、その様子をずっと見ていた。

父も硝子細工を作りはするものの、いつもいびつな形をしていて、
そのたびに「あえてこの形を作ったんだ、嘘じゃないぞ」、なんて必死に言って、
そんな父を見るたびに私と母は顔を合わせて笑っていたよ。

どこか頼りなさげな父だったが、私は母のことと同じぐらい好きだったし、
父も私と母のことを大切にしてくれていて、とても幸せだった。

だけど今その家族がいない、理由は簡単だろう?

母は私が十二歳のときに死んだ。
おっと、同情はするなよ。私はそんなに弱くないつもりだ。

母が死んでからは私はほとんど毎日泣いていたよ。
家の中をぐちゃぐちゃにして廻って、父や爺さんに迷惑をかけたな……。

父も相当悲しかっただろうにな、私の前では絶対泣かなかったよ。
いや、きっと私の前だから泣けなかったんだろうな。


73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/23(水) 00:03:44.67 ID:mH27L2dj0


そんな日が一ヵ月続いてな、私は初めて父に怒鳴られたよ。

「悲しいのはわかる、でもこれ以上お母さんを悲しませるな」、
死んだ人が悲しむの?
わけがわからなくてより一層強く泣いたのを覚えている。

父は泣かないから全然悲しくないのかと思っていた、
でも父の目には涙が溜まっていたんだ。

私よりも長い間一緒にいたんだから悲しくないわけ無いじゃないか。
父は泣いている私をそっと抱きしめてくれてな、
それが嬉しくて、悲しくて、やるせなくて、さらに泣いたよ。




川 ゚ -゚)「なんだか泣いてばかりだなw」

('A`)「……こんなこと俺に話していいの?」

ここは明らかに人に踏み入ってほしくない場所だろう。
なのに何故、俺にこんなことまで話すのだろうか。
雰囲気からも同情を求めていないことがわかる。

川 ゚ -゚)「良いんだ、あと少しで終る。付き合わせてしまってすまんな」

クーはまた視線を月に移し、話し出す。



74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/23(水) 00:04:21.25 ID:mH27L2dj0


それから父は私に色んなことを教えてくれた。

今まで通った道や街のこと。
その中でもこの街は特に好きだということ。

なにより、母と過ごした日々のこと。

私が忘れてたことや、忘れたいこと、
それを聞いて楽しくなって、恥ずかしくなって……悲しくなった。


そして私が寂しそうな顔をするたびに笑わせようとしてくれた父。
彼は私にたった一つの硝子細工と、短い手紙を置いて街を出て行ったんだ。

今から十年も前だから、私が十五のときだな。

その日の夕方、父は鞄に色んなものをつめていた。
父は隣町や、さらにその隣街に行くことがしばしばあったので、気にもとめなかったよ。

夜になると、また一週間もしないうちに帰ってくるだろう、
そんなことを考えて眠りについたんだ。
月が綺麗な夜だった。



75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/23(水) 00:05:33.56 ID:mH27L2dj0


目を覚ますと父はいなかった。
いつもなら朝声をかけてから行くのに、と不思議に思ったが、
急ぎの用事だったのだろうと、あまり深く考えなかった。

まずは三日、早ければこのぐらいで帰ってくるが、帰ってこない。
一週間、大抵はこれぐらいのうちに帰ってくるが、まだこない。
十日が経つと流石に不安になる。

私は父の部屋に入り、何処へ行ったか手がかりになる物を探した。

父の部屋は余計なものは無く、やけに綺麗だった。

部屋の中心にあるテーブルの上に、真っ白な封筒、その脇に木でできた箱があった。

封筒の中にある手紙の内容は、
「母さんと俺の夢を叶えに旅に出る、心配するな。
 絶対戻るから待っててくれ。困ったことがあったら街の人に聞きなさい」

私はそれを見てすぐに家を出た。
会う人会う人に父のことを聞いて廻ったよ……。
でも誰も知らなかった。

家に帰ると荒巻さんがいてな、もちろん中じゃなく玄関に。
父のことを話したよ、でもやっぱり、知らなかったんだ……。



76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/23(水) 00:06:01.82 ID:mH27L2dj0


川 ゚ -゚)「その晩は泣いたよ。泣き虫は卒業したはずだったんだが」

クーはそこでいったん話を止め、
徐に立ち上がると、「少し待ってろ」といって部屋を出た。

トントンと階段を上る音がする。

('A`)「……こりゃまた凄い生い立ちだこと」

一人呟く。
母が死んで父が出て行く、だけど捨てられたわけじゃない。
クーの母と父と夢……、これはなんなのだろうか。

トントン、今度は階段を下りる音。

川 ゚ -゚)「これがさっき言った木箱だ」

そう言ってクーはそっと蓋を開ける。

中から出てきたのは風鈴。
だけど荒巻さんの家で見たのとは形が違う。
縁がぐにゃりと曲がっている。

川 ゚ -゚)「不恰好だろ?これは父が作ったものだよ」

自分の代わりになるとでも思ったのかな、
クーはそう言って笑うと、風鈴にそっと息を吹きかける。



78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/23(水) 00:07:27.30 ID:mH27L2dj0


風鈴の音を聞いて少し不思議に思う。

('A`)「俺の聞いた音と違う」

沢山の風鈴があれば音も違うだろう。
だが俺はこの街に入ってから風鈴を見たのはこれが初めてだ。

その時、これとは別の風鈴の音が聞える。

('A`)「これは聞いたことがある……」

川 ゚ -゚)「ふむ、ちょっと待ってろ」

クーはまた階段を上がり、一分もしないうちに戻ってくる。

川 ゚ -゚)「これだろうな、きっと」

クーが手に風鈴を持っていると風が入り、音を鳴らす。
それはどこか寂しげな音。

川 ゚ -゚)「これは私が作ったんだ」

これは風の音が聞けるんだ、クーはそう言っていた。



80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/23(水) 00:08:15.92 ID:mH27L2dj0


起きるとすでに日は昇りきっていた。

こんな時間まで寝ていたのか、まあ寝た時間が時間だしな。
そんなことを考えていると、客間の戸が開く。

川 ゚ -゚)「起きていたか、昼食の時間だから起こそうと思ったんだが」

その必要は無かったか、クーはそう言って笑う。

……もう少し寝ていればよかった。


昼食をとり終えて、俺はまた探索に出かける。
クーはなにやら用事があるとかでどこかに行ってしまった。

街を歩いていると荒巻さんを見つけた。

('A`)「こんにちは」

/ ,' 3 「こんにちは、旅人さん。少しあちらで話をしないかい?」

特にすることの見当たらなかった俺は荒巻さんについて行くことにした。




81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/23(水) 00:08:55.68 ID:mH27L2dj0


街のはずれにポツリと生えている、それなりに大きな木の下。
そこに置いてあるベンチに腰をかける。

('A`)「話し、というのは?」

/ ,' 3 「クーから話を聞いたのだろう?」

('A`)「はい、けどそれが何か?」

/ ,' 3 「クーの両親の夢、これは聞いてないだろう?」

('A`)「知ってるんですか?」

/ ,' 3 「ああ。あいつは、いや、あいつらは旅立つ時にわしの家に来たからのう」

('A`)「あいつら……?クーの父親だけじゃないんですか?」

/ ,' 3 「クーの父親は妻が作った風鈴を持って旅に出たんじゃよ」


なるほど、あいつらとはそういうことか。
だとしたらクーの言うとおり、
クーの父はあの歪な風鈴を自分の代わりにと思って置いておいたのだろう。



82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/23(水) 00:09:26.22 ID:mH27L2dj0


('A`)「クーの両親の夢、クーは知ってるんですか?」

/ ,' 3「知らんはずじゃよ」

昨晩に両親の夢を説明しなかったのは、
教えたくないのではなくて、教えられなかったということか。

/ ,' 3「クーの両親の夢はな、沢山の人に風の音を聞かせることじゃよ。
    だから彼は風鈴を持ってこの街を出た。
    どうかクーのことをよろしく頼む、必ず帰ってくるから、
    何度も何度も頭を下げるんじゃ……」

普通の人が聞いたらこの夢を馬鹿にするかもしれない。
でも、俺はこの夢を馬鹿にすることなんて出来ないし、する気もない。

('A`)「何でクーを連れて行かなかったんですか?」

/ ,' 3「彼は旅の厳しさを知っていたからじゃろう。
    この街で育つ分には殆ど苦労しないからな」

クーには悪いがその通りだった。
常に危険が付きまとう旅に、たった十五歳の、しかも大切な娘とあらば行かせたくもないだろう。


/ ,' 3「この話はクーにしないでもらえるかな?」

('A`)「(何で?)はい、わかりました……」



83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/23(水) 00:10:32.82 ID:mH27L2dj0


それからはこの街の歴史を聞いたりと、
退屈するようなことは一切なかった。

日が暮れてきて、そろそろ帰ろうということになり、立ち上がる。

('A`)「そういえば、荒巻さんの家にあった風鈴って……、誰が作ったんですか?
    この街ではクーの家にしかありませんけど」

/ ,' 3「弟子の形見じゃよ」

そういうと、荒巻さんは笑いながら去っていった。


('A`)「クーの母親の形見……」

荒巻さんの持つ、いくつかの紅い線が入った透明で綺麗な風鈴。
クーの父親が置いていった、黄緑が混じった風鈴。
クーが作った、青い花の模様が入った風鈴。

それらは、どのような気持ちで作られたのだろうか。


('A`)「知るのは本人のみ……か」

俺はとぼとぼとクーの家に向かった。




85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/23(水) 00:11:17.39 ID:mH27L2dj0


クーの家に帰るとすぐに夕食となった。
食事中の会話は殆ど無く、クーは食べ終わるとすぐに、

川 ゚ -゚)「風呂は自由に使ってくれてかまわないからな」

などと言い残してどこかに行ってしまった。


風呂から上がり客間に入る。
クーはまだ帰ってきていないようだ。


('A`)「(そろそろかな……)」

硝子の街は凄く綺麗だ。
だがクーの父親のように残るわけにはいかない。

('A`)「急だけど……明後日には出るか」

そういい終えるのとほぼ同時に、玄関の戸がガラガラと開く音がきこえた。
お客さんだろうか?玄関に足を運ぶ。

川 ゚ -゚)「ただいま、旅人さん」

汗だくで立っているクーがいた。
夜も涼しいとは言いがたいが、普通にしてたらこうはならない。



87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/23(水) 00:12:08.35 ID:mH27L2dj0


クーは風呂の方に歩いていった。
きっと硝子細工を作っていたんだろう。

クーの作った硝子細工は評判が良いらしく、
注文が入った物を作り売るだけでも生活できるらしい。

しばらくすると、クーが客間に入ってきた。

濡れた黒く長い髪、頬は少し赤みをおびている。
少し潤んだ、黒く大きな瞳。宝石顔負けの美しさ。
そして風が吹くたびに石鹸のような香りが漂う。

(*'A`)「(いつみてもたまらんね)」

そんな風に見とれていると、クーが話し掛けてくる。

川 ゚ -゚)「旅は楽しいのか?」

急にふられたまじめな質問。今まで何度も聞かれてきた質問だ。
焦らず、冷静に答える。

('A`)「楽しいよ。だけど楽しいだけだったらきっと旅をしないと思う。
    出会って、別れて、笑って、泣いて、怪我して、次の街が見えてこない不安や、
    新しい街に入ったときの喜があるからね。俺はそれを全部ひっくるめて楽しいと思えてるだけ」



88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/23(水) 00:13:50.94 ID:mH27L2dj0


川 ゚ -゚)「私の父も楽しいから旅をしていたんだろうか……」

('A`)「でもこの街に残ることを決めた」

川 ゚ -゚)「この街はそんなに良いところなのか?」

('A`)「かなり。でも俺は住もうとまでは思わない」

川 ゚ -゚)「なぜだ?」

('A`)「この街にいたら他のモノが荒んで見えそうで、怖い」

それに旅が好きだしね、そう付け加えるとクーは微笑む。

川 ゚ー゚)「君がそこまで言うのなら旅というのはきっと厳しくて、楽しいのだろうな」

何も隠そうとしない本心から出たであろう笑顔に思わずドキッとした。

川 ゚ -゚)「私は父が帰ってくるまで、両親が愛したこの街で待つ」

川 - )「だけど父が帰ってきたら……」

川 ゚ー゚)「私は広い世界を旅するよ。それが私の夢へ繋がるからな」


その晩、俺はクーに出発の日を告げた。少し怒られた。



97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/23(水) 00:29:52.20 ID:mH27L2dj0


出発日前日の夜。

クーがお別れ会をすると言い出し、
昼間は材料を調達しに街の中を駆け回った。

途中で荒巻さんを拾い、クーの作ったご馳走を食べ、今にいたる。
客間でお茶と茶菓子を楽しむ。

('A`)「そういえばさ、昨日言ってたクーの夢って?」

川 ゚ -゚)「んー、明日教えてやる」

今じゃないのか、明日が少し楽しみになる。

/ ,' 3「旅人さん、君にこれをやろう」

そう言って荒巻さんは、荷物から何かを取り出す。
出てきたものは手の平にのる大きさの箱。
あけると親指ほどの硝子細工、猫のような形をしている。

/ ,' 3「きっと、幸福が訪れるよ」

(*'A`)「ありがとうございます」

そして荒巻さんはもう一度荷物をあさる。



99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/23(水) 00:30:56.62 ID:mH27L2dj0


/ ,' 3「クーにも渡すものがあるんじゃ」

そう言って荒巻さんは木箱をクーに渡す。
中から出てきたものは、紅い線の入った風鈴。

/ ,' 3「お前さんが生まれる前にヒートがわしに作ったモンじゃ」

川 ゚ -゚)「これを母さんが……、もらって良いのか?」

/ ,' 3「いつ死ぬかわからん老いぼれが持つより良いだろうw」

クーは黙って下を向いてしまった。
そして、途切れ途切れに言葉を放つ。

川  - )「ほん…と…に……ありが…と」


/ ,' 3「ふぉふぉ、いいんじゃよ。さて旅人さんは明日から大変じゃろうからな。
    今日はこれくらいにせんと」

川 う-゚)「そうだな、爺さんも泊まっていくといい」



101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/23(水) 00:33:10.56 ID:mH27L2dj0


川 ゚ -゚)「忘れ物は無いか?」

('A`)「それ五回目。流石に無いって」

川 ゚ -゚)「四回目まであったじゃないかw」

('A`)「……多分無いと思う」

川 ゚ -゚)「よし、なら行くか」


三人でクーの家を出て歩きだす。

玄関には三色の風鈴が並んでいた。


('A`)「そういえばさ、夢、聞かせてくれるんじゃなかったっけ?」

川 ゚ -゚)「いいか、絶対笑うなよ。爺さんも。いいか、ぜったいだぞ」


川 ゚ -゚)「私の夢は、風鈴の音を世界に広めることだ」

それで旅をするのが夢へ繋がると言ったのか。



102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/23(水) 00:34:25.99 ID:mH27L2dj0


ん?ちょっと待てよ、確かクーの両親の夢って――。

俺は荒巻さんとの方を向く。
荒巻さんも気づいたようで、二人はついつい笑ってしまった。

川;゚ -゚)「笑うなって言ったろ?畜生!言わなきゃ良かった」

('∀`)「俺達はその夢がおかしくて笑ったんじゃないよ」

クーは少し怒りながら「別に良いもん」などと言っていたが、
町の入り口につく頃には機嫌は直っていた。

川 ゚ -゚)「さて、お別れの前に」

クーは俺に何かを渡してくる。
また木箱、中身が何かは予想できた。

だが箱を開けると、

('A`)「……すげ」

それしか言えなかった。

透明なガラスに白い線でウサギが描かれており、
俺にとっては四つの風鈴の中で一番み魅力的だった。


106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/23(水) 00:37:59.77 ID:mH27L2dj0


川 ゚ -゚)「一つお願いしていいか?」

きっと夢見る乙女や、色恋沙汰が好きな奴なら、
「ずっとここにいて」だのを連想するかもしれない。
でも、これは甘くないお話。


川 ゚ -゚)「もし、モララーという名の男にあったら、その風鈴をみせて、クーは元気だと伝えてほしい」

川 ゚ -゚)「あと伝言も頼む」

そう言ってクーは微笑む。

     
               
      「早く帰って来いなんてい言わない。だから、その旅を心行くまで楽しんでくれ」



俺はそれを聞いたあと、二人に別れを告げる。

('∀`)「短い間でしたがありがとうございました、凄く楽しかったです。
    きっと荒巻さんがいなかったら、この街に入れませんでした」

/ ,' 3「時々で良いからこの街を思い出してくれのう」

荒巻さんの手を握る。皺があって、温かい手。




109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/23(水) 00:39:16.96 ID:mH27L2dj0


('A`)「クー、この町にいる間、面倒見てくれてありがとな。
    風鈴大切にする。伝言も伝えるよ。それから―――」

俺がまだまだたくさんある感謝の気持ちを伝えようとすると、クーがそれを止める。

川 ゚ー゚)「君の話を聞くのはまた今度にするよ」

また今度――。
それはきっとこの街の中じゃない。
俺は勝手にそう解釈した。

('∀`)「いつか、この街の外で逢える日を楽しみにしてる」

川 ^ー^)「私もだ、その時はぜひとも君の名を呼びたいものだ」


簡単な口約束は大っ嫌いだ。
だけどこれは、そんなちっぽけなモノじゃない。


俺はゆっくりと街の外の道にのった。



111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/23(水) 00:40:41.74 ID:mH27L2dj0


街を出て三十分ほど歩いた先はT字路だった。

どちらがどんな街に続くかなんて知らない。

俺は荷物から風鈴を取り出す。

それを指でつまんで手を前に出すと、緩やかな風が吹いた。

心地の良い、楽しげな音がなる。
これが風の音か。

('A`)「風は南から北だな」

南は左、北は右の道。

もちろんコンパスなんて無いから適当だ。

困難が無い旅なんて面白くない。

俺は多分南であるだろう方向に足を進めることにした。



                

                                 二旅目・了




エピローグ&あとがきへ
[ 2008/07/29 17:32 ] 短編まとめ | TB(-) | CM(0)

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